中上健次エッセイ撰集 文学・芸能篇
中上健次エッセイ撰集 文学・芸能篇 / 感想・レビュー
Islay
ナニモノかから逃れるように歯を食いしばって読み進める。逃れなければならぬ程のナニモノに立ち向かってすらいないのに。過酷な時代を脆弱に生きる僕は、中上健次の巨躯にふさわしい熱波を放つ扇情的な言葉で自らをも鼓舞せしめんと、しかし惨めに縋るかわりに、硬く握った拳で殴りかからんかの思いで。生前の氏なら、それこそ望むところだろう。血によって書かれた文字は、血によって読まれなければならない。偶像に頼ることも、楽園を夢想することも、今は無用。中上が愛した安吾は「堕ちよ」と言った。そして「生きよ」と。言葉は、継承される。
2016/05/16
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