新編 怪奇幻想の文学 1 怪物
新編 怪奇幻想の文学 1 怪物 / 感想・レビュー
HANA
姿なきものから奇妙な生物植物まで、SFめいた奇想小説からゴシック文学まで、徹底して怪物に拘ったアンソロジー。とはいえ怪物自体を中心とした作品は「かくてさえずる鳥はなく」や「アムンセンのテント」等一部に過ぎず、雰囲気やその周辺を彩る存在となっている。どちらかというと人間の変容や退化を扱った作品が多い印象。その白眉はやはりHPL「壁の中の鼠」であり、改めて読むとこんな地獄絵図が書かれていたのか。と戦慄を新たにする。ホジスン「夜の声」も決定的な姿を描かずに盛り上げてるし。怪奇小説の名アンソロジーに相応しい出来。
2022/07/23
カフカ
怪物に纏わる怪奇幻想のアンソロジー。古典的名作揃いだそうですが、全て未読でした。どれも読みやすく面白かったです。視覚的に捉える事ができる怪物も怖いですが、目に見えないもの方が底知れぬ恐怖がありますね。中でもずっと読んでみたかった、ホジスン「夜の声」がとりわけお気に入りです。短いながらも、迫り来る恐怖にドキドキし、先が気になって仕方ない程夢中になりました。他にはエルクマン=シャトリアン「狼ヒューグ」、ウェルマン「ヤンドロの小屋」が印象的です。シェリーは「フランケンシュタイン」を長らく積んでるので読まねば…。
2022/09/30
藤月はな(灯れ松明の火)
怪奇小説読みは大喜びのアンソロジー。絶版となり、読めるのが遠方の図書館からの取り寄せなどになるので知らない作品に出会ったり、また、見える事もあって嬉しいのがアンソロジーの醍醐味だ。『フランケンシュタイン 現代のプロメテウス』の生みの親、メアリー・シェリーの「変化」は奥さんがずっと根に持つのもむべなるかな。逆にラブクラフトの「壁の中の鼠」は再読だが、こんなに読みにくい物語だったかなと逆に驚いた。「青白い猿」は終盤を踏まえて再読すると一種の切ないラヴストーリーと気づく構成。一番、好きなのは「ヤンドロの小屋」。
2022/12/28
あたびー
1979年に新人物往来社から出た「怪奇幻想の文学」シリーズV巻「怪物の時代」へオマージュを捧げながら、収録作を選び直し、全て新訳で新紀元社から新しく出版されたシリーズ第1作です。収録作はメアリ・シェリー「変化」エルクマン・シャトリアン「狼ヒューグ」アンブローズ・ビアス「怪物」WHホジスン「夜の声」MPシール「青白い猿」HPラヴクラフト「壁の中の鼠」EFベンスン「かくてさえずる鳥はなく」ジョン・マーティン・リーイ「アムンゼンのテント」ヘンリー・ホワイトヘッド「黒いけだもの」ジョン・コリア「みどりの想い」
2022/08/16
翠埜もぐら
「怪物」Monstreとは何かということが最近よく話題になっています。メアリ・シェリー女子の「フランケンシュタイン」の怪物に名前がない事をどうとらえるかとか。この本のような古典の名作は怪物の正体がぼかされていることが多く、想像とか考察などと一緒に「それが何か」ではなく「自分にとって何なのか」と言う、ある意味哲学的な意味合いをも含んでいて、好きなだけ深読みできるのも古典の楽しみですね。マンリー・ウェイド・ウェルマンの「ヤンドロの小屋」はシリーズ物だそうなので、探したら見つかるかな。
2022/10/22
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