えぴすとれー: 歌集
えぴすとれー: 歌集 / 感想・レビュー
ちぇけら
息切れや翳りのなかの戀の途の夏のおわりの月夜の汝の背。太陽と月のつめたい、恋。イエスと呼んだあなたの首筋に、一滴の涙が落ちる。瀧はどこまでも瀧として、わたしのあわれな業を洗いさって流れてゆく。水面に垂れた紫陽花の青さのように、あなたを想う気持ちはつのり、まっすぐに飛ぶ雲雀のように、愛することを知った。ひとおもいに、滝壺に飛び込んでしまいたくなる衝動は、どこに向ければいいのだろう。月の光がわたしを翳にする。想いがアンドロメダに交りあうとき、きっとわたしは死ぬのだろう。光につつまれて。
2019/03/24
だいだい(橙)
水原さんの短歌は写実的なものもあるが、多くが幻想に基づいている。文語を使いつつ、カタカナや西洋チックな人名を紛れ込ませることで、独特の雰囲気を醸し出している。その幻想の世界には、獣姦だったり、殺人だったり、非倫理的でダークな要素が時々顔を出す。ここがこの人の個性であり、強みなのだろう。そしてとにかく言葉のリズム感がいい。ただ時事問題をテーマにした社会詠は、プロバガンダを叫んでいるようでかなり興ざめする。水原さんの唯一無二の個性と魅力をあたら殺しているようにも見えてしまう。
2021/10/08
笠井康平
上品でした。形式の悪ふざけとかあんまりしない。
2019/03/10
浦和みかん
語るとそこから無知が露呈しそうで語るのが難しい歌集だなあ。主体の身体性みたいなのが希薄で、主体自体が現代の神話か何かを生きているようだ。助詞や助動詞の使い方に深みがあり、しかし固有名詞には現代的なものが入り込んでいて、その混じりが面白い。社会詠にもいい歌が多い。
2018/01/11
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