架空線: 歌集
架空線: 歌集 / 感想・レビュー
だいだい(橙)
大好き。風景、情景が鮮やかに立ち上がってくる。そしてどの歌も、物語を持っている。同じ風景を見ても、違うものが見えている。自分の「景色」を日本語で表現する力がある。それって素晴らしい。歌集を読んでこんなに「物語」を感じたことはない。最初図書館で借りたが、あまりにも気に入ったので即、アマゾンで買った。この歌集は「短編集」だろうか。だとしたら「長編」「中編」もあるのか。石川さんの物語の世界をもっともっと知ってみたいと思った。
2023/10/05
qoop
飄逸な軽みと豊かな情感を感じる著者の短歌は、一種のバリアとして彼我の間に横たわっているかのよう。負った傷はもちろん、傷つけたものもまた突き放すのではなく同時に包みこむ皮膜の役割。ニュートラルで柔らかな客観視。上がらない温度。現代的という印象を受けた。 /祖母の口は暗渠ならねど土地の名のとめどなく溢れかけて見えざり /わたし変温動物だから灼熱の打ち明け話ほとほと不得手 /「ふじはに」で切れたる歌を「ぽんいちのやま」とつないで旅閉ぢてゆく /まどろみのあひま幾度も思ひ出す売約済の五位鷺の絵を
2019/10/09
糸くず
一首の完成度の高さにも唸らされるが、やはり連作形式で物語を語る力がずば抜けている歌人だと思う。日本橋川を下りながら江戸から現在までの東京の歴史を祖母の人生と重ねつつ語る「川と橋」、インドから来た〈姉〉のダヤーを描いた「彼女の部分」、千年生きる陸上選手の男を通じて震災後の岩手県釜石市の風景を描いた「千年選手」など、短歌によって人物や土地の記憶と歴史が一つの形となって立ち上がってくる。著者は物語ることで自身や読者の記憶に歴史が刻まれ積み重なっていくことを願っているのだろう。
2023/09/18
ひじき
北村薫の本で引用されていた歌が気になって手に取った歌集。歴史的仮名遣いの端正なかたちに現代的な風景、ちょっとユーモラスな情景、うたた寝で見る夢のような雰囲気が自然に織り込まれていて、これはストレートに好き!って言いたいタイプの歌…。ひとつのテーマに沿った連作や小説作品などの文脈がある作品が多く、一首一首を楽しむだけではなくて本全体の流れをおはなしのように追っていくのもとても楽しい。
2020/04/30
あや
日常を詠んでいるのに強く惹かれる歌多数。本屋さんにお勤めされてたところに親近感を感じます。
2019/01/12
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