刺繍
刺繍 / 感想・レビュー
佐藤一臣
元妻が以前より洗練され幸せそうに再婚したのを目の当たりにして、忸怩たる思いに苛まれるっていうのわかる気がした。当時の若い自分では感じることが出来なかったことに気づいたのは、老いのせいだろう。身体は年取っているのに、心が置いてけぼりの違和感がなせる技で、ようやく人として老成する窓口に主人公は立ったのかもしれない。刺繍に依存しそうだけども、たっぷり依存し切ったあとは、彼は新しい世界に踏み出していくんじゃあないか?
2023/11/04
なーちゃま
かなり感情移入して読んでしまった。自分の手元にある時は、相手のする些細なことに苛々したり不満を持ったりして、相手が自分の傍にいることの幸せになかなか気づけない。しかし、離れてみて、さらに他人のものになってみて、別れて以来初めておせんを自分の妻ではなく一人の女/人間として見たとき、当時の苛立ちが単なる自分の狭量さのせいに思えて、美しかった思い出だけが思い出されて、どうしてもっと早く傍にいる尊さに気付いて行動できなかったのかと自問する。だが、二人はやり直しても、きっと上手くいかないのが恋愛の難しいところ。
2022/12/07
risa
自分の身勝手な行動で別れた20以上も歳下の元妻の事を思い出す大塚さん。気持ち悪いなあ…と思った。
2020/09/18
小魚小骨
主人公の身勝手さに腹が立ちながらも、それでも美しいと思ってしまう藤村の文章力。元妻への未練タラタラな思い、しかも自分が飽きて追いやったくせに!…でも離れて思い出す妻のいる日常、その記憶が蘇る時に妻の幻影が立ち上がるようで美しい。記憶の純化、失ったからこそ。
2024/01/29
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