ある崖上の感情
ある崖上の感情 / 感想・レビュー
みも
【読書会に寄せて】崖の上から下の町の窓々を覗く。『ある心の風景』では窓から外を眺める。梶井にとって「窓」とは、自己と他者との境界を意味したのだろうか…。それとも、此岸と彼岸を分かつ川のようなものなのだろうか…。背中合わせの生と死…寄せては返す波濤に揺さぶられ続ける小舟のような自己。生の渇望を潰えさすかのような死の存在が、梶井の意思を混濁させ、現実感を曖昧なものにしてしまったのだろうか。他者の「生」を覗く事は、背徳的で甘美な愉悦を齎す。だがそこに「死」を見い出した時、厳粛な感情としての無常感が立ち現れる。
2018/05/20
ame
働かずに平日の昼間をぶらぶら過ごしている私は、生島の言う人の窓を眺める感覚がとても分かる気がする。よその窓にしかない生があって、だけどそれは自分が生きるはずだったものであるかのように思えたりするのだ。そしてそんな私も崖下の窓のひとつにすぎないのだろうなと思うと、なんだか救われるような気持ちになった。
2024/03/20
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