ケアの社会学――当事者主権の福祉社会へ
ケアの社会学――当事者主権の福祉社会へ / 感想・レビュー
きいち
A5判二段組500P超、でも、ケアの概念に関わる考察、定量調査の分析、ほぼ参与観察のような現場での取り組みのレポート、どれもそれこそ当事者視点なので全く中だるみすることはない。介護保険のポジティブな意義、「ケアされることを強制されない権利」、家族による介護の近代性。。上げていけば目から落ちるウロコはキリがない。ケアの第一の「当事者」を、支援を必要とする人にまずあえて限ってスタートすることから、広く深く、そして建設的な論考につながっていって、読み進みながら何というかワクワクしっぱなしだった。
2012/12/01
kenitirokikuti
ケアの定義部分だけ。社会学の定義を引用者パラフレーズして。間人格的(インターパーソナル)な現象である、社会的な相互行為を研究するもの/ケアには、これまで蓄積されてきた不払い労働(アンペイド・ワーク)と再生産労働の理論が適用できる/英語圏では、80年代ごろから使われ始めたケアという言葉は育児(チャイルド・ケア)を指していた。そこにエミリー・エイベルが「ケアする娘」(親から自立したはずの子(特に娘)が親の介護を強いられることを示した。日本語では保育や育児という言葉が先行し、ケア=高齢者介護となった。
2018/07/29
黄色と橙
筆先は鮮やかで論旨は明解。読者自身の問題としても読むことができるので恐れずに読んでほしい。再生産労働を「産み、育て、看取る」までを含めた一貫したサイクルとして捉え、ケアする側/される側の相互行為に着目する重要性を論じた、上野社会学10年の蓄積。特に、愛・道徳・孝行という言葉で説明されてきたケアの根拠を問うた4章、ケアを“労働”として捉える必要性を論じた6章は痺れました。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重され生き延びるための思想、という言葉は心強い。それにしてもこのボリュームで3000円以下って凄い!
2011/09/13
ざまたかこ
高齢者のケアについて書かれているのだけれと、どうしても子どものケアに置き換えて考えてしまいながら読んだ。人の生き死にに寄り添うことは女性的な役割なのか/女性の役割だから労働価値は低いのか/家族の形態が変わるなかでどうとらえなおしたらいいのか/たくさんたくさん書かれていて、難しいのだけど目が離せなかった。そして、どんなテーマでもフェミニズムの視点で切り込んでいくことと同じ時代を生きていく女性たちへのエールを忘れない著者の言葉の重みに私自身がエールをもらった気がした。
2014/07/24
もりえ
まさに目からウロコの連続。ただ、実際の介護従事者のなかで、こういう観点、視点を持ってる人、持てる人が何人いるかと思うと、ちょっと気持ちが萎えそうになるかなあ、、、。当事者自身からの発信も期待できそうに無いし、、、。でも、何かを信じてがんばろう~~!と思えた本。勇気付けられます。
2014/04/11
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