ナパーム空爆史 (ヒストリカル・スタディーズ16)
ナパーム空爆史 (ヒストリカル・スタディーズ16) / 感想・レビュー
harass
ナパームの開発と廃絶までのノンフィクション。このゲル状焼夷剤は1942年に開発され安価で使いやすく絶大な威力を発揮した。だがベトナム戦争で被害者の子どもの写真が報道され反戦運動の高まりとともに、ナパームの名は極悪なイメージを帯び続ける。2001年に米国はナパームを廃絶したが、ほぼおなじ種類で別名の焼夷剤が使用されているという。ナパームという言葉と映画の映像から、自分はベトナム戦争から使われだしたのかと思っていたが、東京大空襲ですでに使われていたと知り驚く。ちょっと退屈に感じるところがありそこが残念。
2016/10/04
Willie the Wildcat
民間人の犠牲も念頭故に、実験も日独家屋!?実践はもちろん兵器開発に倫理性などある訳はない。とは言え、大戦末期の日本空爆の件には、唯々絶句。標的も決めず?出世のため?「モトロフの花束」や「料理用油」など、時代を経ても続く”言葉遊び”に嫌悪感。時勢とはいえ、日本も弾筒製造し、加害者の一端を担う矛盾。加えて、その後も世界に広がる「被害者が加害者となる」構図。転機はベトナム戦争。真実が人の心底を問う!痛烈な皮肉は、残存ナパーム。使用済み核燃料と同様、人類の愚かさを備忘。『炎の審判』とは悲しくも言い得て妙。
2017/03/04
Shintaro
ナパーム材を加えてナフサをゲル状にしたナパーム焼夷弾は、第二次大戦時にM-69集束焼夷弾として完成し、東京大空襲ほか各都市に使われ、日本人を最も多く殺した兵器となった。その後朝鮮半島やベトナムでも使われ、ベトナム反戦運動とともに非人道的兵器として対人地雷やクラスター爆弾同様使用を禁じられた。第Ⅲ議定書にサインしたのはオバマ氏その人である。戦争に関する書を読むのは苦しいが、戦争は不可避なのか、可避なのか、避けられるとしたらその条件は何なのか、それを知りたくて読んでいる。そして核兵器は今でも禁じられていない。
2016/06/11
BLACK無糖好き
ナパームの炎はどんな標的でも命中するとその表面に飛び散ってしっかりと付着し、1000度以上の高温を保つ(p109)。このおぞましいゲル状焼夷兵器が人類にどのような被害を与えてきたか、又開発国であるアメリカが、国連の特定通常兵器使用禁止条約でナパーム弾の禁止を承認するまでの経緯が圧倒的な臨場感を伴って描かれる。ナパーム弾の廃棄処理でカリフォルニアからインディアナヘ輸送するが地域の大反対から、結局テキサス、ルイジアナでの廃棄になる辺りはいかにもという悲しい現実も浮き彫りとなる。
2016/05/29
がんもどき
アメリカ人の書いたナパーム(焼夷兵器)についての本。アメリカをはじめとするこの兵器を使用する者にとって、コストがかからなくて効果的な兵器を手放すのがいかに難しいかがわかる。東京大空襲についても書かれているが、戦争に勝てばお咎めなしという理不尽さも感じられる。名前や成分を変えつつ焼夷兵器は手放されていないんだなというのは、ある種無力感を覚えさせられることだなと。
2024/06/03
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