感情化する社会
感情化する社会 / 感想・レビュー
harass
2016年にでた評論。スクールカースト文学論というのに惹かれて手に取る。久しぶりに書いた評論のようで、最近のネット状況などを踏まえているが、シニックな印象がある。まあ本人はポストモダニストであると自認しているようだが。ラノベのなろう小説のように、文学自体がヒエラルキーに完全に取り込まれていて、もはや「敗者の文学」が死んでいるとの指摘は興味深い。元々専門の柳田口承文学研究などから、ネットやAIを含む文学や小説についての考察などなかなか読みがいがあった。ところどころに刺激的な文が散らばっている。
2018/08/29
どんぐり
感情化する社会と文学を論じた文芸批評。「感情化する社会」は、感情が価値判断の最上位に来て、感情による共感が社会システムとして機能する事態にあることを指し、理性や合理でなく感情の交換が社会を動かすエンジンとなっていることをいう。Webに繋がった「感情の発露」は、トランプ大統領のツィッター、安部首相夫人のSNS「いいね」、新聞を読まない麻生大臣の謝罪などを見てもわかるように、感情的な政治、感情的なメディア、感情的な知性などを生み、際限なくこの社会に蔓延している。これが導入部で、大半は文学論。なんだかもったいな
2018/03/30
きいち
8月の天皇の言葉が「お気持ち」であったこと、それに9割の国民が「共感」したこと。感情化した社会と文学に、大塚は次々と闘争を宣言する。<まず「感情」の外に立つ。そのような「機能」を私たちはかつて批評と呼んだ>。◇でも、僕の「お気持ち」への評価は異なる。置いてきぼりにされて狼狽する櫻井よしこや百地章ら日本会議の姿を見れば、実は今回の「お気持ち」こそが、感情化する社会への<批評>の稀有の成功例だったじゃないかと思うからだ。感情の動員に対して理性で対抗するよりも、「別の感情」による上書きのほうが有効じゃないかと。
2017/01/31
ころこ
タイトルに「社会」と入っており、本文では本書は文学論だといっています。今と昔の比較文学のような社会学的なアプローチになっていて、今更ながら、著者には文学=社会学というのが暗黙の前提としてあるのだと気付きます。流行りの意匠を酒の肴にして、実は昔は凄いということを強調したいことが見え見えで、年取ったなという印象です。「社会のあらゆるものに文学を見出すという文学の形式」に安住していると批判するのか、その視点の安定した議論が実り深いと読むのか両義的ですが、決して後者が廃れたわけでなく、得るところ依然として多です。
2020/02/12
阿部義彦
大塚英志の」文学論です。Twitterが結局140字に落ち着いた事で現代人は長く書く必要性等感じて無いのだと喝破します。ネットでは感情発露が目的で長文の自己表出など元少年Aか小保方靖子以外は求めない。泣ける感動する薄っぺらい共感を求める小説をサプリメントに習い機能性小説と名付けます。そこからスクールカースト小説(朝井リョウ)に及びLINEは文学を変えたか?AI文学論を経て最後には教養小説論で村上春樹(田崎つくる)に挑みます!「もっとあからさまにいう。田崎つくるは、つまりは百田尚樹のたぐいなのである。」
2016/10/10
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