柔らかい時計 (定本荒巻義雄メタSF全集 第 1巻)
柔らかい時計 (定本荒巻義雄メタSF全集 第 1巻) / 感想・レビュー
∃.狂茶党
『白壁の文字は夕日に映える』 伝奇ロマンのような物語は、最後の最後でSFに変貌する。 『緑の太陽』 メタミステリ。 正直精神病的な大道具がうまく機能してるとは思わない。 その大道具をもっと掘り下げて欲しかった。 『大いなる正午』 次元土木小説。 哲学的な話題と土木の話が、うまく絡まってるとは言い難い気がする。 作者による注が新たにつけられている。
2024/05/07
白義
架空戦記の大家として知られる以前の荒巻義雄の、SF作家として最も尖っていた頃のメタSF作品を収めた全集の一巻目。内宇宙という迷宮への志向が時空間すら捻じ曲げ、侵食するにまで至った、濃厚な思弁性と眩暈のするような幻想感覚が両立した超絶傑作ばかり。中でも「大いなる正午」が、超次元宇宙で時空建設を営む神の如き高次生命と、この宇宙から超次元に投げ出された一人の人間がコンビとなり、異次元より全時空を侵食する『海』から次元を守るために時の防波堤を作ろうとする、という異次元規模にまで拡大された鉄腕DASHのような超怪作
2016/02/26
スターライト
冒頭の「白壁の文字は夕陽に映える」は、『アルジャーノン』の逆、すなわち知能の退行をアイデアにした作品だが、バラードを始めそれぞれのキャラクターが生き生きと描かれていて、キイス作品にもひけをとらない傑作に仕上がっている。次の「緑の太陽」も宇宙が舞台だが、通俗的な冒険SFではなく、人間心理に焦点を当てた興味深い作品。しかし集中の傑作は、やはり表題作「柔らかい時計」だろう。SF作家バラードのテクノロジー観にも通じる切り口で、人間と機械との関係を問い直し、あっと言わせる結末は、見事としかいいようがない。必読。
2015/08/13
Mark.jr
あの有名なダリの絵から着想を得た表題作から、星雲賞受賞作「白壁の文字は夕陽に映える」まで。どの短編も発表から何十年も経ってますが、その独特かつ幻視的なイメージは今でも鮮烈かつ、バラードなどのもはや古典ですらある海外のニューウェーブSFにまったく引けを取らないものです。
2019/07/06
かやは
傑作だというのは論をまたないところなのですが、「柔らかい時計」のあのめちゃくちゃな感じは得がたいものだと思うのですよ。
2015/12/31
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