バンド・デシネ 異邦人
バンド・デシネ 異邦人 / 感想・レビュー
たまきら
全てのなれ合いを否定した群れない、群れられない男・カミュ。彼が年取ったらどんな言葉を紡いだんだろう。結局この作家はどこにも所属できずうそぶいていた寂しい魂だったんだなあ…と、彼より長く生きて読み返して思いました。彼の幻滅をそのままぶつけたような舌足らずな文に、大学生のころは惹かれたけど…人間って変わるものね。アルジェリアとフランスというより、この男はどこに行っても異邦人。
2023/01/31
Y2K☮
原作既読の方は本書の10Pを読んでみて。我々は少し違う物語を絶賛していたのかも。アルジェリアの歴史、アルジェという町が暗示する声なき声に耳を傾ける事で隠れた骨格が浮き上がる。まるでビートルズの「レット・イット・ビー・ネイキッド」。お蔭で銃口を向けた敵がなぜ彼なのか、その答えを初めて明確に視た。クールで正直で頭脳明晰。そんなムルソーも実は持たざる者。社会の偽善に反逆したかったわけじゃない。ただ彼なりに自由に仲間と楽しく生きたかっただけ。いわば「ジャニスの祈り」のアレだ。「抱かせて、さもなければ放っておいて」
2018/06/19
マリリン
『異邦人』を読み、なるべく早く手にしたいと思い購入。文字からは想像できなかったムルソーの表情、舞台であるアルジュ、当時の時代的背景などを知ることで、作品をより深く理解する事が出来た。「太陽のせい」とはそういう事だったのかと。特に最後の3㌻の回想のシーンはとても感動的、噛みしめるように読んだ。
2018/08/07
Takashi Takeuchi
カミュ『異邦人』の劇画版。原作を中学生の時に読んで以来の再読。殺人の理由、今回は無宗教、自分達の理解できない者を厳しく罰する裁判(社会)の不条理がキャラクターの表情を通して突き刺さる。殺人の動機については、「魔が差した」は陳腐な言い方かもしれないが、意識にない行動をとってしまう事を否定できないと思う。そのトリガーとしてアルジェの街、オレンジの大地、碧い海、白い太陽光が見事にビジュアル化されている。緻密で美しい水彩画、絵の力を感じた。
2022/03/28
ラウリスタ~
バンド・デシネ版、異邦人。ヴィスコンティの映画と多くの登場人物は似ているが、映画のムルソーとは違い、ここではとても若い(ジェームズ・ディーン似)。原作に極めて忠実だが、海水浴の後見たフェルナンデルの映画を特定するなど、近年の研究成果を盛り込んでいる。カミュが暮らした地区、裁判所などを印した、アルジェの地図も参考になる。
2024/10/03
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