盗まれた廃墟: ポール・ド・マンのアメリカ (フィギュール彩 58)
盗まれた廃墟: ポール・ド・マンのアメリカ (フィギュール彩 58) / 感想・レビュー
akuragitatata
僕はポール・ド・マンを尊敬したい。詐欺師同然の出版人であり、大学教授であり、差別主義者だった。失職したあとはベルリッツでフランス語の教師をし、脱構築批評をもとに倫理を問いつづけ倫理の果てに修辞を問うたこの思想家の、香具師としての、魔術師としての側面を愛したい。巽孝之という批評家/研究者は日本でもっとも信頼のおけるエッセイストであり英文学批評の輸入者である。巽を通じてみるド・マンは、その非道徳的な背中で倫理を背負い、罪人の身で脱構築批評を掲げる愚かな旗手だった。それを愛する力がほしい。僕は信者である。
2017/07/15
渡邊利道
アメリカの文芸批評・文化批評・哲学研究における脱構築ブームを牽引したベルギー出身の亡命者ポール・ド・マンの生涯と業績を、同時代の社会事象・人間関係を詳細にたどりながら分析して、抽象概念がレトリックとして用いられるある種の「文章」の性質について考察する歴史的な試みとして読んでいく。大変わかりやすく、面白い批評理論についての論考。ド・マンをめぐる言説がこんなに明快に整理されてしまってよいのだろうかという疑問さえ浮かんでくる快刀乱麻な知的快感に満ちた本。
2016/07/23
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