冥誕―加藤周一追悼
冥誕―加藤周一追悼 / 感想・レビュー
奥澤啓
収められた29編の文章のほとんどは、さまざまな分野で活躍する人たちによる。しかし、学生の山本美穂子による一編は性質がことなる。筆者は高齢者介護ボランティア、ホームレス支援などを行っているというが、高校生時代不登校になって生き辛い境遇にあったたため、社会から疎外された存在に関心を持ったという。16歳の時、加藤が京都で行っていた市民との勉強会(おそらく「白沙会」)に参加し加藤と接した。彼女のホームレス問題についての文章に加藤は感想を認め、それぞれの立場でできることをすることの重要性を説いたという。
2015/02/01
奥澤啓
加藤周一と近しかった人たちによる追悼文集。すべての文章から、この、不出世の知識人に対するなみなみならぬ敬意、敬愛、思慕、が伝わってくる。イェール大学で教えをうけた水村美苗の文章には、思慕や敬愛をこえて恋愛感情に近いものを感じる。加藤がいる場所に同席すると「精神の祝祭」を味わえたという。「知識人」という言葉に値する最後の存在、それが加藤周一であった。そして、われわれは加藤周一がいない時間を生きなければならない。丸山真男、加藤周一、白川静、宇沢弘文。骨の太い知の人がどんどん日本から姿を消していく。
2015/02/01
つばめ
加藤周一氏の逝去(2008年暮れ)を悼む追悼文集。氏の綴る言葉の美しさを僕は大好きでしたが、氏について書かれた文章もまた、どれも美しく、感動。「夜空に偶然に点在している星々が、にわかに意味を持ちはじめ「星座」として見えてくるような(鷲巣 力)」加藤周一の世界に出会える本です。
2014/06/01
KUMA0504
加藤周一の追悼集である。先に市民の追悼集を読んだばかりで、確かそのとき私は「今はあまり読む気がしない(その多くはすでに読んでいるから)」と書いた。こういう知ったかぶりが私の悪い癖で、私の知らない追悼文がここにはたくさん載っていて、いろいろと学ばされた。反省したい。
2010/04/04
ねぎとろ
前半の追悼は、やや面映ゆい感じもあるが、生前の加藤の人柄を偲ばせる。まあ追悼文とはそういうものか。後半の批評めいたいくつかの文章も面白かった。毎日、漢文に関する文章を「和文のために」必ず読んでいた、という話は興味深い。
2021/08/22
感想・レビューをもっと見る