アンラッキーヤングメン クウデタア
アンラッキーヤングメン クウデタア / 感想・レビュー
安南
1950年代に起こった「小松川事件」「皇太子ご成婚パレード投石事件」「社会党委員長刺殺事件」を三島由紀夫による能仕立ての演出にて再演してみせるという筋立て。ゾワゾワする。簡単に感想を書くのは難しいが、大変好み。画のほうも『ジャコモ・フォスカリ』に出てくるようなゆるい三島ではなくて、クールな三島にシビれる。
2015/04/18
ぐうぐう
藤原カムイと組んだ前作では1970年前後という時代を描いていたが、本作『クウデタア』では1960年前夜という時代が選ばれている。前作同様(というか、大塚英志の創作のほとんどがそうであるように)、実在の人物と事件をあえて偽史という歴史の中に配置させる。『クウデタア』において、それは小松川事件、皇太子御成婚パレード投石事件、そして社会党委員長刺殺事件、それぞれの実行犯となる。本来、交わることのない三人を大塚は、偽史の舞台にいっしょに立たせる。作中でその舞台を用意するのは、三島由紀夫だ。(つづく)
2015/04/08
Bo-he-mian
三億円事件の犯人がビートたけしだった、というオチが面白かった『アンラッキーヤングメン』シリーズ第2弾。‘58年に起きた小松川女子高生殺人事件の犯人として絞首刑となった金子鎮宇(李珍宇)、‘59年に皇太子(今上天皇)のご成婚パレードの馬車に投石した少年、’60年に日本社会党委員長・浅沼稲次郎刺殺事件を起こした山口ニ矢・・・彼らをモデルにした「K」「M」「Y」3人の「クウデタア志願」の少年たち。現・皇后さまと同じ名前の娼婦を登場させ、少年の一人と肉体関係を結ぶ・・・なんて、静かに過激なことをやっている(笑)。
2019/02/17
臓物ちゃん
昭和フェチな俺のバイブル『アンラッキーヤングメン』の続編が知らぬ間に出ていたとは。昭和30年代に異なる3人の高校生が起こした事件を三島由紀夫が能に見立てるなんて…痺れる!前作のような昭和臭が意図的に消されたため、どの事件もまるで「今」起きたかのように感じてしまう。そして驚いたのが石原慎太郎。こんなクールでかっこよくていいのかよ!三島と石原が並んで座る車が戦後という地獄を駆け抜けていくラストシーンは、その先を知っているにも関わらず見知らぬ未来を思わずにはいられない。登場人物ではもうひとりの美智子さんが素敵。
2015/05/26
さとさとし
1959年に起きた皇太子襲撃事件を中心に置き、無名の青年の物語を描く。前回も重要人物だった三島由紀夫が実名で前面に出てくる。西川静蘭3年前くらいの作品では、下手だったのに一挙に上達したなあ。藤原カムイとは違う狂気によった魅力のある絵となっている。前編を通して映画の予告編のようなカットに連続で読みやすいとは言えないが。三丁目の夕日では、全く知ることのできないこの時代の暗黒面を感じるのにはいい作品。
2019/09/24
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