打ち震えていく時間
打ち震えていく時間 / 感想・レビュー
misui
対談・講演集。対談の相手は古井由吉・佐佐木幸綱・天沢退二郎・柴田南雄・中上健次・大野一雄。話題は様々だが総じて場所と身体性について語られている。場所と身体性、平たく言い換えれば題材と技法なわけで、それらの絡まり合いを通じて生成される吉増剛造の詩を読むには最良の手引のひとつと思う。今回読んで特にこの人の耳のよさ・読みの細やかさ・対峙する真摯な姿勢に圧倒された(あきらかに危なげな大野一雄への寄り添い方ときたら!)。合間に挿入される詩も素晴らしい。少し苦手意識を持っていたがあらためて読んでいこう。
2016/11/17
袖崎いたる
敵わなすぎる巨人やで。吉増さんの知覚している世界がちょっとよくわからんですとなる。ものの、わからんからといって退屈とか無視することもできない存在感がある。こんな言いかたはないけれど、目が深い、見るの加減が遠い、古い声に振れる胸が新しい。佐佐木幸綱との対談も川と海の違いを、詩人の生理を備えた肌感覚で言分けてくれていて、快い。海の永遠と、川の移ろい。詩人は「感じ」で物事を語る精度と、それから彩度が気持ちいのよね。ごちそうさまでした。
2020/08/24
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