怪異を歩く (怪異の時空 1)
怪異を歩く (怪異の時空 1) / 感想・レビュー
夜間飛行
昔は行き倒れもいたし、そもそも伊勢参りなど宗教目的の旅が多かった。そこから夢幻能の「諸国一見の僧」が旅で霊と出会う話が出来たり、長崎の唐館で客死した幽霊の跫音?を語り継いでいったのだろう。牡丹灯籠や鬼太郎の下駄の音も、元はそうした旅の時空から生まれてきたのである。近代には、柳田國男や井上円了など旅をして怪談を集めた学者や、泉鏡花や太宰治など異郷(故郷)を作品の核に据えた作家も現れた。本書中特に、鏡花の「山海評判記」を巡ってオシラ神と漂泊の巫女について論じた6章が興味深く、いつかこの話を読んでみたくなった。
2022/11/27
HANA
旅や場所と怪異の関係性を考察した一冊。鬼太郎から有名なタクシー怪談まで、その取り扱う範囲は幅広い。読んでいて特に気になったのが、中央と地方の関係性を取り扱った部分。鬼太郎の妖怪退治の旅から岡本太郎とイタコ、そして知られざる『会津怪談集』とその著者等。イタコとかの中央からの記事に何となく「オリエンタリズム」的なものを感じるのは地方在住者の僻目かなあ。後、タクシー怪談と墓地の関係や、名古屋の脱出ルート等興味深いものも満載。他にも妖怪の創造や心霊スポット巡り等、単なる研究所の枠には収まらない面白さもありました。
2016/10/24
へくとぱすかる
怪異をめぐる研究書。「旅」から自然発生した怪談から発展して、今や妖怪を「創作」するために歩くフィールドワークが行われている、というのには驚く。興味深いのは泉鏡花が昭和初期に書いた「山海評判記」。一度読んでみたい。ラストのタクシーの怪談は、誰もが知っているだろうが、研究するなら公共墓地の成立や、タクシーという交通機関の歴史までひもとく必要があるということ。深い。
2016/10/23
mittsko
ボクがまだ一度も参加できてない「怪異怪談研究会」(2012年8月~)、その最初の成果「怪異の時空」全三巻の第一巻(この後、別途四冊が刊行済み、すっごい生産量!)。歩くという行為、そこから移動・場所・空間、さらに異郷/故郷が本書の切り口(元々は旅と地方だった由)。こうして集められた各論は、対象も方法も学的専門もてんでばらばら。そこが魅力といえば魅力ですね ※ 個人的に、市川先生の「妖怪採集」の実践報告、伊藤先生の地方の怪談文化の紹介、小松先生の名古屋の怪異の歴史的地層発掘がおもしろかった
2023/08/24
qoop
異郷で怪異と出会う、他郷の視点で故郷の民話を見直す、怪異を求めて旅する……など、物理的・心理的移動が怪異にもたらす影響を探った一冊。中では、作中の妖怪事件の現場の変遷に現代の周縁領域のありかを探る清水潤氏〈地方を旅する鬼太郎〉、街歩きをしつつ妖怪を創作するワークショップ、市川寛也氏〈「妖怪採集」のすすめ〉、魔処として伝わる場所に歴史の補助線を引く小松史生子氏〈尾張名古屋、魔の往く道〉などが興味深かった。
2022/07/12
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