「日本人」の境界―沖縄・アイヌ・台湾・朝鮮 植民地支配から復帰運動まで
「日本人」の境界―沖縄・アイヌ・台湾・朝鮮 植民地支配から復帰運動まで / 感想・レビュー
かんがく
『「民主」と「愛国」』に続いて二作目。ナショナリズムが持つ「排除」と「包摂」の要素を、琉球や台湾、朝鮮の「日本人」への同化から読み解く。経済的に負担になる一方で、国防面で重要な近隣植民地に対して、日本の植民地政策決定者が極めて無定見だったことがよくわかる。アジアと欧米に挟まれた有色帝国主義国の日本の立場が、原敬と後藤新平、朝鮮人代議士、沖縄復帰運動などのテーマからよく理解できた。
2020/06/13
Toska
多民族帝国時代の日本をメインテーマとする大著。大日本帝国の植民地支配は確かに欧米とは異なっていたが、それは悪い意味においてであって、被支配民族を同化したい、だが差別も残したいという過酷なものだった。台湾と朝鮮では、既得権にしがみつく総督府の動向も意外に重要なファクターであったようだ。一方、「結論」で示される視野はさらに広く、「包摂」と「排除」を両輪とした国民国家による支配と、これを踏み越える可能性にまで及んでいる。
2023/09/06
ドラマチックガス
大ボリュームで中身も骨太。要点を一言でまとめるなら、「日本は「どこまで日本人として認めるかどうか」をご都合主義でつかいわけていた」ということでしょう。アイヌ、朝鮮、台湾重視で読み始めたが、特に後半の主眼は沖縄だった。そして、沖縄問題に関する自分の認識の低さに嫌気が差した。薩摩藩ひどいな、戦前日本ひどいな、占領期アメリカひどいな、でも、今もさほど変わらないか…という流れ。ひろゆきも、沖縄を茶化す前にこの本を読め。●沖縄ではまだ沖縄の言葉が残っており、沖縄出身の芸人さんなんかが全くわからない言葉を話したりする
2023/03/19
awe
2週間ほどかけてようやく読破。読書メモを作成しながらなのでなかなか大変だったが、充実した読後感を得た。特に印象的だった点をいくつか。まずは官庁のセクショナリズム。立法権をはじめとする「総督府特権」が植民地政府には存在し、その廃止を目論む中央政府との攻防が戦前に生じていた。朝鮮や台湾の総督府は、それらが日本からある程度「独立」している状態を望んだ。そうした状況では好き放題に「統治」できるからである。一方、内務省や拓務省は日本への同化を志向した。こうした軋轢の他、原地住民の運動、内地出身の植民者など、様々な
2021/01/24
Hiroki Nishizumi
良かった。実は大日本帝国はなぜ欧米のように植民地管理とせず台湾・韓国を併合したのか不思議に思っていた。本書を読んだ感想として、その結論は大日本帝国が国家として未熟であったのだと感じた。また自分自身の歴史的知識がいかに貧困であったと言うこともよく分かった。徴兵制が当初外地に適用されていなかったことを知らなかったり、当時の発想として国防の視点が想像以上に大きいことなど実に勉強になった。
2020/07/17
感想・レビューをもっと見る