インド日記―牛とコンピュータの国から
インド日記―牛とコンピュータの国から / 感想・レビュー
ヴェネツィア
本書は小熊英二氏が2000年の1月、2月の2ヶ月間、国際交流基金の招きでデリー大学に滞在した折の日記である。デリー以外にもサハランブル、アムリトサル、ベナレス、バンガロール、コーチンにも足を延ばし、広いインドの南北を体験するなど、なかなかに精力的である。もちろん、全編にわたってインドでの日々が綴られ、私たちもまた著者の目を通してインドを見ることになる。そして、デリー大学等で展開される著者の授業や講演は、同時に日本の近代の意味をも語りかけてくる。つまり、インドを合わせ鏡にすることで、かえって日本の姿が⇒
2023/06/09
デューク
日本近代史の教授である筆者による、2か月のインド滞在の所感をまとめた一冊。 筆者が滞在した2000年当時、インドは高度経済成長とグローバリゼーションの中で、急速な社会変化と価値観の動揺、右派ナショナリズムの台頭に揺れていた。伝統と近代が混ざり合い、国家としてのアイデンティティが確立されていく時代。これは筆者が専門とする、近代日本の姿と重なる。インドを描いているようで、インドを通じて日本の近代とその文化について語った一冊。おすすめ
2021/01/11
ジュン
いつ読んでも次のセンテンスに動かさせる。 (同じアジアといっても)「みんなウェーバーやマルクスの名は知っていても、お互いの国の知識人や歴史のことはほどんど知らない。...それでも共通の土俵はある。まさに、「みな西洋のことは知っているが、お互いは知らない」ということそれじたいは、共通だ。」(小熊英二『インド日記』p284)
2018/07/22
たろーたん
興味深かったところ。インド映画では、観客が大声ではやし立てるが、それが気にならない程音量が大きく、またヒーローやヒロインが危機に陥るとヒンドゥー教の神様が奇跡を起こしてくれるらしい。また、意味もなく皆が突如踊り出す。カースト制度を身分制よりも分業制として説明していたところも面白かった。コックはコックの仕事しかしてくれないらしい、庭師も、洗濯も、掃除も、それしかしない。インド人は欧米と比べて批判されると素直に受け入れるが、フィリピンより悪いと言われると怒る。p58まで。
2021/01/14
ジュン
まなざすことについて非常に自覚的に書かれている。参与観察という手法を意識しつつ、自己の視点がそのまま自らの偏見を暴露していく様は、まるでエッシャーの手のよう。
2016/01/21
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