戦争が遺したもの
戦争が遺したもの / 感想・レビュー
どんぐり
2004年の刊行から、いつの戦争だというくらいに「戦後」はさらに遠のく。鶴見俊輔の戦争体験と日本の戦後思想をたどる鼎談だ。聞き手は、上野千鶴子と小熊英二の論客。政治家の家での生い立ち。母(後藤新平の娘)の折檻を伴う愛情から不良になったという少年時代を過ごした鶴見は、15歳で渡米し、ハーヴァード大学に入学。日米開戦により帰国し、ジャワで海軍の通訳と通信傍受に従事する。戦後は教職につきながら『思想の科学』の創刊し多くの知識人と交流し、戦争責任の問題と「転向」研究、60年安保からベトナム反戦へと向かう。→
2021/06/05
踊る猫
鶴見俊輔を読んでいると、はなはだしく矛盾をはらんだ表現になるが「純朴などす黒さ」とでも呼ぶべき鶴見の思考の生理の性格に思わず惹かれていくのを感じる。本書でも、特に上野千鶴子の鋭い問いや疑念にきわめて明晰かつ誠実に答える鶴見の言葉、そして仁義を重んじる態度が持つある種の「人間臭さ」に惚れ直す(だが、それはもちろん「思考停止」「なあなあ」に堕す危険もはらんでいよう。ぼくも彼らを見習わないといけない)。事実を確認するというよりは、そうした洗い出しを通して本書はそうした鶴見の思考術・哲学を問い直す1冊とぼくは読む
2024/10/11
おさむ
先日、評伝を読んだ鶴見俊輔。もう少し彼について知りたいと思い読んだのが本著。小熊英二と上野千鶴子という豪華なインタビュアー。馴れ合いにならず、2人が突っ込んだ質問もするところがこの本を面白くしています。ジャワ島での軍属時代に慰安婦の斡旋をした事実や、作家で大臣にもなった一番病の父親に対する軽蔑、母親の支配からひたすら逃れようとした青年時代、戦後のベ平連に代表される徹底して権威というものを信じないスタンス。その語り口から人物像が鮮明になりました。時代情勢を知らないとわからない事も多いですが、良書です。
2020/02/26
みねたか@
上野千鶴子と小熊英二による鶴見俊輔へのインタビュー。聞きにくいことにあえて踏み込む二人。従軍慰安婦補償のアジア平和基金の話などには緊張感がみなぎる。それだけに合間の座談では二人が一ファンに戻っていて微笑ましい。鶴見氏の仕事を知らない故に浅い読み方になったのは残念だが,氏の生きてきた道が垣間見え,考え方の根っこに触れられる。軍属としての従軍経験を踏まえた,もし自分が殺人を命じられたらという問建て,昭和天皇の戦争責任の取り方の考察など、知識人とは自ら考える人をいうことを改めて教えてくれる。
2019/12/06
Aya Murakami
市内に上野千鶴子様が講演にくるというので上野千鶴子特集やっていたうちの1冊。 上野千鶴子さんの話よりも鶴見さんの話や生き方に共感を覚えた。正しくも厳しすぎる母親に反発して絶対的な正しさを疑う発想は本当に心に響いた。うちも母親が厳しい人で本当に苦労したので…。 戦争がテーマということで慰安婦の話も載っていました。慰安婦にも人種差別の影があったり、慰安婦の側が18で兵隊二兎られた少年を哀れんだり…。発見が多かったです。
2018/06/10
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