宝塚・やおい、愛の読み替え―女性とポピュラーカルチャーの社会学
宝塚・やおい、愛の読み替え―女性とポピュラーカルチャーの社会学 / 感想・レビュー
富士さん
多元的消費の具体的な明確化、関係性の消費という切り口は、オタクなら感じることを見事に言語化したコロンブスの卵的な仕事ですし、既存のジェンダーを強化しているとか、ゲイを搾取しているとかの批判に学問的に反論し、好きなものを自力で守ろうとする姿勢はオタクの鑑です。しかし理論は錯綜していていついていけない。宝塚とやおいをホモソーシャルな関係にあこがれる女性が支持しているのはわかりますし、女性にもホモソーシャルな関係があっていいはずだというのもそう思うのですが、それがなぜ結びつくのかの必然性がよくわかりません。
2019/09/05
左手爆弾
ルーマンの「愛のコード」とセルトーの「消費と形容される生産」を軸にして、宝塚とやおいを分析。ホモソーシャルを歴史的な「男社会」に限定せず、女性同士の中にも存在し、その中で共有される特有のコードとして宝塚ややおいは位置づけられる。その分析は具体的な宝塚の芸名問題や、やおい化できる作品の条件等にまで及ぶ。現実の恋愛云々とは別の、あるいは社会が女性に与えようとする愛のコードとは別のものが、女性同士のホモソーシャルの中で実現されていることを明らかにしたのが本書の功績であるだろう。
2016/03/02
KuruhashiZakuro
修論用に。特に相関図消費について、女オタクとしていままで感じていた思いがバリバリ言語化されていて痛快だった
2024/04/06
たろーたん
新しい概念「相関図消費」。東のデータベース消費がキャラクターを単体で消費するのに対して、相関図消費では複数のキャラクター間の関係性にも関心が向けられる。そして、その関係性を取り上げ、恋愛コードで読み替えたうえで、解釈ゲームとしてのやおいが始まる。私たちから見れば、勝手にホモ化してると思うのだが、彼女たちは原作を重視しており、原作の上で恋愛関係のコードを嵌め込み、その関係を妄想する。自分の解釈を学説とし、同人誌を書くことで論文として発表しているというところは文学者みたいだな、と思った。
2021/01/25
出でし月かも/井出
「そうそう納得!」と「その視点があったか!」のどちらもある興味深い一冊。女性とされる人々が抑圧されてきたことからコミュニティを作るようになったという見方、恋愛が親密性のメタファーだということ(メタファーに興味を持っているのでとりわけ)、関係性を「読み替える」こと、さまざまなことを知った。コミックマーケットでのポスターの置き方などを調査したりファン(オタク)の方にインタビューしたり、かなり踏み込んだこともしている。研究者の間では賛否あったようだが、私は著者の研究を応援したい。
2018/04/22
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