知の統合は可能か: パンデミックに突きつけられた問い

kitten

図書館本。コロナ1年目の2020年から2022年にかけて行われた対談集だが、テーマは「知の統合」について。新型コロナに対するには、科学なしでは話にならないし、科学だけでも解決できない。学際研究でもあるけれども、人文科学系の学問も統合して、どうすればよいのかを考える必要があった。それが「知の統合」だ。サイエンスコミュニケーターの話も出てくる。非常に難解な哲学的な問いまで含むので読み解くのに時間がかかった。人間の知性では、知の統合は不可能に近いんじゃないだろうか。道筋すら見えてこない絶望感があるのだが。

2023/05/05

スコットレック

本書で語られる「知の統合」、それは医療や科学だけでなく、哲学・宗教・地方自治etc、様々な視点から結集された総合知。まだ驚異の続く新型コロナのこれまでとそしてこれから。コロナの問題だけにとどまらないまさしく著者の方が心血を注いで作り上げた大著！ この道はいつかきた道。本書を読むと否が応でも、日本という国は同じ事を何回も繰り返しているのだという事がよくわかる。「専門家と政策決定のバランス、両者をつなぐ回路がないのが現状」。本書で書かれている様々な問題点は国防を始めとする全ての日本の根幹に当てはまるのでは。

2023/06/16

meòrachan

前半の対談，というか瀬名さんの問いかけに対する専門家の見解はどれも興味深かったです．後半の瀬名x渡辺も良かった．欲を言えば経済の専門家の見解もあると良かったです．専門家と専門家の組み合わせは軋むので，その間にサイエンスコミュニケータを挟むことは知の統合に絶対必要だと思いました．タイトルへの本の中での回答は「不可能」ということで良いと思います(ネタバレ？)．ほんの少しの希望はありそうですが，パンドラの箱の中身ほども残ってなさそう．あと瀬名さん，100分で名著好き過ぎです

2023/05/02

tegi

日本におけるコロナ危機に最も誠実に向き合った書物のひとつだと思う。瀬名秀明はすごい仕事をした。答えは載っていないが、考え方は載っている。

2023/10/01

2n2n

あらゆる分野の専門家を集め、科学的に正しいとみなされていることを寄せ集めて、あとは政治家が責任持って判断すれば全てがうまくいくかといったら、そんな安直な話ではない。事実判断と価値判断を分離できない問題などでは、近い分野の専門家同士で意見を違えることも起こる。そうなると素人の一般市民は何が正しいのか判断できなくなり、専門家全体への不信感に繋がる。実際、新型コロナのパンデミックでは専門家への不信感はこうして生まれてしまった、と瀬名秀明は考えている。その問題意識が本書のタイトルに繋がるーー知の統合は可能か

2023/08/13