ダ-ウィンの使者 (下) (ヴィレッジブックス F ヘ 3-2)
ダ-ウィンの使者 (下) (ヴィレッジブックス F ヘ 3-2) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
子どもの頃から疑問に思っていたことがあった。それは、頂点に人間がいる進化の系統樹だ。いつも不思議に思っていたのだが、進化の考え方を受け入れるとするならば、現在の頂点たるホモ・サピエンスの、その先はどうなるのだろうということだった。当然、次なる進化が起こるはずである。その積年の疑問に答えてくれたのが本書だった。物語の後半はさまざまな「愛」が描かれるために麗しくもあり、また前半の厳しさが緩和され(薄まるということだ)もするのだが。小説の全体は一貫して最新の生物学を踏まえ、リアリティに満ちていた。得難い作品。
2016/11/24
ケイ
人類の進化としてどういう生物が生まれてくるのか…。高校生の頃にこの手の本を読んで物凄く動揺した。この作品は、進化だけでなく、体制への批判や人としての倫理観が根底にあるので、いわゆるSFとしては少し違う。その分、読者の幅が広そうだ。個人的には、ありえないという気持ちが先に立って、最後まで感情が移入できなかった。DNA的なものが絡んでくる話は、どうも相性が悪い。
2017/05/21
まふ
SHEVAウイルスを持つ胎児が出産すると死産であった。このウィルスは何万年も前から連綿として引き継がれてきたがここにきて活性化し、進化した、とされた。米国政府はこのウイルスの拡散を抑えるとともにSHEVAウィルスの調査研究のために妊婦の隔離を法定化する。主人公の分子生物学者ケイは人類学者ミッチを結婚し懐妊するが、政府の隔離を嫌悪し、自然な出産を目指して逃亡を図る…。一体どうなることか。その結果は…。上巻の緊迫度が高かったため、最後は少し手抜きの感あり、ガッカリ。G628/1000。
2024/10/11
セウテス
後半は、やはり人類の進化に対して、国や政治、人はどの様に動くのか問いている様だ。高校生の時、楳図かずお氏の「漂流教室」を読み、未来に飛ばされた小学生たちが出会う蜘蛛の様な生物を思い出す。その生物こそ、未来の環境に適合した人間の姿だったのだが、進化は人間でない者への変化である可能性があると言う事か。本作を読むと、最初は「復活の日」、最後は「継ぐのは誰か?」と、小松左京氏の名作を思い出す。ウイルスパニックのスリルとスピード感をしっかりと持たせながら、人は進化をどう捉えるのかを描いた中々価値ある作品だと感じる。
2019/06/21
扉のこちら側
2016年357冊め。【178ー2/G1000】まさかの続編ありきの結末だった。上巻読了時点では、まさに人類の存続をかけた医学的戦いであり、人類がウィルスに勝利するだろうことを疑っていなかったのだけれど。ただ、作中に登場する研究機関等の組織は実在のものだし、かなりの取材を行って書かれたものだろう医学、生物学的プロットもよくできたものだった。HERVの水平移動ではなく垂直移動に着目したことで、単なるウィルスパニック物には終わらなかった点を評価。
2016/05/23
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