龍を見た男: 時代小説集 (藤沢周平珠玉選 7)
龍を見た男: 時代小説集 (藤沢周平珠玉選 7) / 感想・レビュー
山内正
寅蔵は漁師の子なのに海を嫌った 商家に奉公に行き今年になって家に戻った 女房おりくと顔を合わすと 気が滅入る 他所の女達と比べ頼りなく声も小さいが負けず魚を売って来る 外で呑もうと立上がった時善宝寺に 一度行ってみねえか有難い寺だと 女郎屋は風待の船乗りで一杯 馴染のおはつがやっと来た 草臥れてんだ酒をと三杯呑み 昼間からずっと抱れとおしで眠たい 寅蔵が船の櫂を流されたと飛び込んだ 後を源四郎も飛び込んだ 寅蔵の頭が見えない足を引き込む潮 葬儀の後善宝寺へおりくに連出され 池に何か得体の知れないのが
2021/09/22
山内正
仲間の向こうから三之助を見てた女が顔を背けた 酒を注ぎに同業の八兵衛が来た 父の葬儀に顔も見せなかった男が何を言う ところで亀甲屋の縁談がと 誰聞いたか身持ちが悪い娘だと 亀甲屋には父親の借金の残りが 断れば返済を娘を貰えば戸倉屋はと陰口を 通りを曲がり急に気付いた おつぎだ 子供の頃子屋に老人と 住んでいてみんなで囃し立てた 事件は近所に人殺しがあって 盗まれた金が小屋から見付かり 大番屋老人は送られた 三之助は小屋に投げ入れた男を見た 言われるまで忘れてました おつぎは店を辞めたこれ以上裏切れない
2021/09/20
山内正
若い時に無かった立ち眩みが二三度 小さいが店は繁盛している 絹物を扱うと亭主の考えにおとしは 反対だ古手屋のままがいいと 三年後に広い店をと所まで来ている もう四十身体が動かない 突然亭主の父親が軽い中風になり 数年で耄碌が激しくなり 知らない婆さんを家に呼び帰らない 女湯を除くと苦情が来て 亭主はこれは本物の呆けが始まった やがて義父は夜歩きを始めるように 木戸番からも知らなかったのかと 見知らぬ男から爺さんを預かったと 身代金を出せときた 戻った義父の背中を流したら 鼻唄が聞こえる
2021/10/05
山内正
松前屋の手代がもう少し出来ませんかねこの下駄売れると思います 昨夜ね思い過ごしか知りませんが おかみさんを見たんです男の人とね お仲に男が出来たってことか 仕事場に座って台所から漏れる光を眺める 店は四半刻の距離だがと考えてしまう 清兵衛は四十ニ、十年前に再婚した 子は居ない良い女房に巡り会えたと 以前の事は聞かずにいたから 信じられない儘酒を飲み長屋に お仲の声がした 分かったよ姉ちゃん明日帰るよ 寄ってく合わせようかうちの人に 昔の事言わないのは悪い癖でね 何でも話すよ この下駄くれるの今履いていい
2021/09/27
山内正
親父が死んだ時手が違うと断られ 悔しさは残っていた 昔いた鶴吉が来て妹おきぬが病にと お前と二人担架を切って店を出たんだ知った事かと追い返す 唖で職人の音吉が真顔で藤次郎の袖を引っ張る 全身で責める様に ある時母親が飯を食わすの忘れて 仕事場でまだ音吉がいた ちゃんと言うもんだよこの馬鹿 立上がった音吉の目に涙ためて 人に怒らない事で自分の居場所を拵えていた 暗い布団部屋で寝かされ なんて様だ 縁側から身体の良くなった妹の笑い声が 音さんと話してるんですよ昔のように身振り手振りでね
2021/09/18
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