ユリイカ 2014年12月号 特集=百合文化の現在
ユリイカ 2014年12月号 特集=百合文化の現在 / 感想・レビュー
壱萬参仟縁
イメージとして、宝塚歌劇団とか、女子寮とか女子大みたいなのがあるが、実際はどうなのか。木村朗子先生によると、レズビアンは普通に結婚する人にとっては無関係なものとして、どこかへひとくくりに置き去りにされる別枠感がずっとあった。レズとはアイデンティティ(50頁下段)。男女関係以外の関係について考察する時代。そんな分野におじさんが介入してキモぃと言われるのは当然だが、敢て借り出してみた。中里一先生によると、人間は、格付け、棲み分け、共生のゲームのなかで一生過ごす運命にあるという(67頁下段)。
2015/01/06
柳瀬敬二
百合文化史や評論はいつもの「吉屋信子からマリみてまで」なありきたり感。けれど、百合というものに対して抱く思いは千差万別。同性だからこそできる共感であったり、異性愛を軸として構築されたジェンダー観からの解放であったり。実社会では厳しい現実を前に霧散してしまうような、ある人にとって大切なものも、百合という理想化された虚構の世界では生存が許されるのかもしれない。どういうきっかけで皆が百合が好きになったのかを知るにはいい特集だった。レズビアンの人でも百合が苦手な人から大好物な人までいるのは面白い。
2014/12/03
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吉屋信子の小説の「象徴における具体物と観念との対応のズレや破れ目」(バトラーの言うところのジェンダー・トラブル?)を指し示す川崎賢子「半壊のシンボル」、アイデンティティのカテゴリーにとらわれない出来事としての性愛を描くクィアの実践として「百合」をとらえる木村朗子「『突然の百合』という視座」、レズビアンが男によってポルノグラフィックに表象されてきた歴史に注意を向けつつ、「百合」の解釈共同体に、男性中心主義を乗り越えた女性としての主体化の契機を見いだそうとする堀江有里「女たちの関係を表象すること」が良かった。
2017/02/20
もっち
無論全部が全部頷ける内容というわけではないけれど、普段は一人で作品を貪るばかりなので、こんなに多くの「百合」について見解・考察・分析をまとめて読めるのがとにかく楽しい、わくわくする 最近は「女子が二人いれば百合(になり得る)」の境地に近づいています
2014/12/03
かがみ
今をときめく百合文化をひとつの精神史として俯瞰できる一冊。大正期において吉屋信子の「花物語」など少女小説の中に胚胎した百合の系譜は、今野緒雪の「マリア様がみてる」で2000年代以降サブカルチャーのジャンルとして確立、そして今、なもりの「ゆるゆり」に至りカジュアルで肯定的なイメージを獲得した。これまで「排除」ではなく「包摂」の原理で発展してきた百合という概念は一ジャンルコードに留まらず、エディプス的規範に収まり切れなかった「過剰な何か」に「解放区」や「居場所」を差し出したひとつの物語と言えるのではないか。
2020/02/14
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