ビンゲンのヒルデガルトの世界
ビンゲンのヒルデガルトの世界 / 感想・レビュー
松本直哉
神秘思想家にして作曲家というイメージが、ページを繰るにつれて次第に書き換えられていった。女子修道院長として最古の室内水道を作る実務家、薬草や魚の生態と効能を調べる自然学者、精神病者を隔離せずともに寄り添い治療する医療者…その多彩な活動に共通するのは「神の器」としての人間の肉体への、神の業としての自然への関心であり、同時代の異端カタリ派が肉体を軽視したのと著しい対照をなす。女性で無学で病身というハンディにもかかわらず、いやそれゆえに、誰にも真似できないような達成を成し遂げた天才の生涯。豊富な図版も興味深い。
2019/01/27
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