シモ-ヌ・ヴェイユ力の寓話
シモ-ヌ・ヴェイユ力の寓話 / 感想・レビュー
さえきかずひこ
ヴェイユにとっての"力の寓話"は、本書第6章で抑制的に扱われる、17世紀を舞台とした彼女の未完の戯曲「救われたヴェネツィア」が象徴する。著者は、当作についての考察を通し、ヴェイユの古代と現代を常に往還する思想の本質に、深みと重みを兼ね備えた筆力で迫っていく。ヴェイユは概ねあらゆる"力"を忌避したが、緊急時の戦いは避けられないと考えており単純な反戦主義者では持てない葛藤が示される。ちなみに「救われたヴェネツィア」については『シモーヌ・ヴェイユ』(岩波書店)で存分に論じられているので、そちらもぜひ読まれたい。
2018/07/27
真魚
力の支配が如何に人間を損なうか、如何に抗いがたいか、故に力に屈しない人間社会を求めて突き詰めたヴェイユの人生と思想をまとめた一冊。「レヴィ族のアカの乙女」と呼ばれた革命家時代から神秘家となった晩年まで一貫した美しい魂の片鱗に触れる。
2019/12/03
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