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容疑者の夜行列車

容疑者の夜行列車

容疑者の夜行列車

作家
多和田葉子
出版社
青土社
発売日
2002-06-01
ISBN
9784791759736
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容疑者の夜行列車 / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

全13話(本書では輪と表記するが)からなる連作短篇集。そのいずれもが、表題通りに夜行列車での1人旅であり、「あなた」と2人称で語られる。きわめて静謐で、深みのある小説だ。プロットというほどのものもないのだが、それぞれの地名から喚起される情景と、列車内での情動を「あなた」である読者は追体験していくことになる。時間軸も現在であったり、また過去であったりするのだが、いずれの場合にも我々は独特の小説空間の中に身を置くことになる。そこは強いリアリティを持ちつつも、また茫洋とした夢のような異空間の世界でもある。

2013/09/09

KAZOO

多和田さんの本を読むといつも何か新鮮な感じを受ける気がします。ここには13の連作があり、それぞれご自分のいかれたところについての話なのだという気がします。不思議な感覚で列車に乗り込んで不思議な人物が出てきたりして、実験小説のような気もするのですが私はいつも楽しんでいます。村上さんのファンには申し訳ないのですが、わたしはいつも多和田さんが日本人でノーベル賞に近い小説家だと感じているのですが。

2018/01/21

まーくん

多和田さんの本は初めて。果たして、この選択は適当だったのだろうか?物語は二人称で語られる。”あなたは立ち止まって、あたりを見回した…”という感じで語られる。何か不安で落ち着かない。あなたはどうやらダンサーで夜行列車で旅をする。パリへ、グラーツへ、ザクレブへ、ベオグラードへ、北京へ…。駅や列車、コンパートメントや同室の旅行者の様子は、何かつじつまが合わないが、妙にリアルで、80年代の共産圏のほの暗い雰囲気が迫ってくる。”鋼鉄の摩擦音が月を蝕み、駅が暗黒宇宙の真ん中にぽっかり浮かびあがる。”そして旅は続く。

2020/12/27

buchipanda3

夜行列車で各都市を旅する「あなた」の物語。読み始めて二人称小説だと気付く。珍しいものに出会ったかのように少し嬉しくなった。読み進めるうちに「あなた」という人称が自分なのか誰なのか定まらない宙ぶらりんな感覚に包まれていく。まるで旅行している時のどこか自分が自分でないような浮付いた感じ。いつもだったらこんな事しないのに。「あなた」は危険な目にも会う。でもいつも何とかなる。夜の不思議な出会いがそうさせるのだ。陶酔の言葉に捕まらないように「あなた」は旅を続けなくてはいけない。車輪が回り続ける限り、物語が続く限り。

2022/10/05

どんぐり

このミステリアスな書名から容疑者が紛れ込んだ夜汽車、夜行列車を思い浮かぶが、ミステリーではない。都市から都市へ、寝台車で多和田さんのイメージの想起と言葉のアナロジーによって紡ぐ異邦人の旅の語り。第1輪(話とぜずに、車輪の輪をあてている)のパリから始まり、第2輪のグラーツ、ザグレブ、ベオグラード、北京、イルクーツク、ハバロフスク、ウィーン、バーゼル、ハンブルグ、アムステルダム、ホンベイ、そして「どこでもない町」に至る13輪まで、蠅が飛び、かたつむりがのたくり、電車のでんでんむしが二本のアンテナを伸ばして線路

2020/01/07

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