カニバル: 食人種
カニバル: 食人種 / 感想・レビュー
凛
1931年パリ人間動物園にまつわる実話ベースの物語。カナック人の中では今もなお語り継がれている話なのだろう。ニューカレドニアから大都会パリへ輸送された主人公が、連れ去られた許嫁を探しに街中を不安と緊張一杯に疾走する姿が生き生きと脳裏に再生される。1931年なんてほんのこの前なのに酷いな!とは思いつつ日本でも男女雇用機会均等法は1986年施行だし、差別意識の是非なんて未だ黎明期なんでしょうかね。
2013/07/29
ナツ
本当の食人種の話ではなく、フランス人によって食親族に仕立てられ見世物にされたニューカレドニア人達の実話を元にしたお話。 訳のせいか情景が浮かびにくかったのが残念
2021/07/06
dilettante_k
原著98年。1931年のフランス・パリ植民地博覧会。ニューカレドニアから半ば拉致されてきたゴセネらカナックの人びとを待ち受けていたのは、未開のカニバル(食人種)として動物とともに観衆にさらされる「人間の展示」だった。屈辱的な冷遇と、ワニと引き換えにドイツの見世物に送るという理由で婚約者を引きはがされたゴセネたちは怒りを爆発させ、彼女を奪還すべく脱走し、植民地博の熱狂に沸くパリの街を疾走する。帝国主義と民族学の暴走として悪名高い人間の展示が植民地の人びとの尊厳に残した爪跡を、実話に則して告発する中編小説。
2015/04/06
runorio
年老いた主人公が、パリにおける若き日の出来事を語って聞かせる形式で進行してゆく、実話を基にした物語。20世紀初頭のパリの情景が自然と頭に浮かんでくるようなイメージ豊かな中篇。カナックの人々が受けた恥辱はこうしていつまでも語り継がれるべきだろう。しかし博覧会てこんな昔からやってたんですね。
2011/02/10
ターさん
ほんの100年程前のパリで、植民地博覧会があった。そこで、ニューカレドニアから先住民のカナック族の人達がカニバル(食人種)として展示(!)された。その歴史上の出来事を小説化したものだ。何ともおぞましい出来事である。世の中は信じられないようなことが起こる。過去においても、現在でも---。そして、未来においても起こっていくことだろう。解説に「加害者は忘れても、被害者はその傷を忘れることはない」とあった。久々に読後感の重い本であった。
2020/01/20
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