天才だもの。 わたしたちは異常な存在をどう見てきたのか
天才だもの。 わたしたちは異常な存在をどう見てきたのか / 感想・レビュー
harass
天才とされる人物の世間のイメージについて語る。有名な天才とされる人のことはあえて避けている。また天才ということの定義についても。ニレジハージというピアニストは初めて知った。ベルナール・ビュフェ、花山吟一、青木繁、杉田久女なども。著者は、宮城音弥の「社会的適応性を犠牲にして創造作用を行う人間」という定義がしっくりくるとしている。初めてこの著者を読む人には薦めない本。あまりに緩くとりとめないところがあり、エッセイとして考える本。
2014/05/31
猫丸
尋常の人と比べてはるかに高いレベルの能力を持つ者を天才と定義するなら、それは程度の問題である。長い研鑽を経て到達する境地であれば天与の才とは言えぬのだから、生まれながらの能力でなくてはならない。本書には芸術家の例が多い。一般的にも若き天才と称される人物が出やすいジャンルが絵画や音楽だ。ただ、優劣の絶対基準を決め難く、能力の順序を一本の直線上に定められない憾みがある。となると、天才の驚嘆すべき所以は程度の差ではなく、質的な差異に求めたほうがよいだろう。普通ではない異常な能力の発露を見て我々は途方に暮れる。
2022/02/18
むししし
精神科医の著者は、少しひねくれていて目の付け所が面白い。辛辣な物言いや、独特の言葉遣いがとてもしっくりとくる。「世界の様々な天才、身近な天才、そもそも天才とはなんぞや?」といったありがちな題材でも、この方の切り口はどこか斜に構えていてイジわるい感じがいい。
2014/12/30
かやは
「天才」とは世界の根源である「混沌」から要素を取り出し、人々にわかりやすいように「秩序」を与えて示してくれる存在。「社会のため」に行っているのか「自分の楽しみのために行っていたものがたまたま社会のためになった」のか。後者が本当の天才と言えるんだろう。天才になりきれない人は何処か社会に「媚びて」しまっているんだろう。「天才」という価値は「美」と同じくらい人を魅了し、遠ざけ、嫉妬させる。「天才性」が大衆からかけ離れたところで輝き、人ならず行動をしてくれれば、人々は心乱さず存在を許容できるのかもしれない。
2017/11/09
澤水月
カメラマンが実は言語能力に優れているのではという意見に激しく首肯。色々な天才が登場するが、特に杉田久女、ビュッフェ、ニコラ・テスラが面白い。ほか”春日節”な文学渉猟がホント楽しい!
2010/12/19
感想・レビューをもっと見る