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亡霊のジレンマ ―思弁的唯物論の展開―

亡霊のジレンマ ―思弁的唯物論の展開―

亡霊のジレンマ ―思弁的唯物論の展開―

作家
カンタン・メイヤスー
千葉雅也
(序)千葉雅也
岡嶋隆佑
熊谷謙介
黒木萬代
神保夏子
出版社
青土社
発売日
2018-06-22
ISBN
9784791770847
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亡霊のジレンマ ―思弁的唯物論の展開― / 感想・レビュー

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内島菫

最初の「思弁的唯物論のラフスケッチ」は、まさにメイヤスーの思弁的唯物論という立ち位置を理解するための助走になっている。「潜勢力と潜在性」では、「充足理由律は非合理性が持つもう一つの名である」との断言により、時間を法則(全体性)から開放する。それにより時間は、あらかじめ可能とされた確率的な時間ではなく、偶然の創発的な現れを展開する時間となる。「亡霊のジレンマ」は再読。本書の流れで読むと、メイヤスーのいう思弁的な神が宗教的な意味での神ではないことがよくわかる。奇跡が本当に奇跡であるならばそれは神の技ではない。

2018/09/29

34

いかなる論証もその前提のすべてを明示化することはどうしてもできない。根底的に新しいことを述べようとする哲学のこころみは、それゆえ修辞的(としばしば蔑まれる)技法に頼らざるをえない。メイヤスーの場合には、思弁的な新奇さが逐次的な論証の身振りと結びついているがゆえに、「明晰な論証」という修辞を用いているのではないかという形式的な疑義が生じる。しかしその修辞も功を奏したと見えて、他の哲学者たちから広範な反応を引き出すことに成功したわけだが、この本では疑わしさの水準をらくらくと越えて反動の域に達してしまっている。

2018/08/25

月をみるもの

白眉は https://bookmeter.com/reviews/74049213 の改訂版。メイヤスーは、けっこういろんな SFを読んでるっぽいが、ニーブン読まないのか? 「無常の月」(=原題はまさしく Inconstant(!) Moon) は、ポパー流の普通の(?)SFに回収されちゃうかもしれないが、リングワールドに出てくるティーラ・ブラウンは明らかに科学外世界の住人である。亡霊のジレンマは、まんまカラマーゾフ大審問官だし、カントのヒュームに対する反論は人間原理じゃん、、という気がする。

2018/08/20

またの名

全ての法則が無化されたカオスを求める哲学者は創作物だとデタラメで破綻した駆け出し作家の不手際でも無法則ジャンルに入り得る、と発言(何でもアリ思想)。何でもアリなら悲惨に死んだ亡霊達を復活させ救済する未来も可能という表題論文のアイデアは思想史上多くの先行者を持ち目新しさに欠けるけど、カオスからの新たな創発を予想できないのは理性の無能ではなくむしろその可能性を考えられる理性の能力の発揮として称賛。反動的になるのを避けて能動化し過ぎるとメディア等と癒着した見かけはクリエイティブな死に至るとの警句が、真理で辛い。

2019/09/27

無重力蜜柑

思弁的実在論のカンタン・メイヤスーの論文&講演集。諸事情あって読んだんだけれど、章によって読みやすさの程度の差が激しい。「思弁的唯物論のラフスケッチ」と「潜勢力と潜在性」はかなり難解。「亡霊のジレンマ」は読みやすいし先の二章の導入になる気がするので、こちらから読んだ方がいいかも。二つの文学評論的な講演録は読みやすいが、SF( FHS)の方は親しめるもののフランス詩の方は全く馴染みがないので理解不能。「減算と縮約」が今回の目当てだったのだが、ベルクソンの積読を消化してから読むべきだったなと反省。

2020/07/20

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