百年の批評: 近代をいかに相続するか
百年の批評: 近代をいかに相続するか / 感想・レビュー
しゅん
漱石・安吾・折口から村上・舞城、さらに岡田利規に村田沙耶香まで。一つの流れを持つ文芸批評集として構成され、磯崎新・高畑勲・大江健三郎・山崎正和・蓮實重彦の1930年生まれの各ジャンルの作家に一つの重点をおく。しかし、一番大きいと思ったのは司馬竜太郎を「国民作家」として批評したこと。そのポピュラリティに比して、司馬が文芸史の流れに位置づける作業は確かにあまりされていないと思った。『太平記』の位置づけなどが、中国文学研究と照らされて描かれるのも面白い。ただ、どこか断片的に終始している印象も残る。
2022/11/08
hasegawa noboru
「語り方の問題」に自覚的であった大江健三郎を引き継ぐのが村上春樹だと位置づける。〈戦後日本の中流階層に根ざした村上春樹の〉〈健全なナラティヴの姿勢と意志〉。ところが、冷戦の終りと長い不況、情報化に直面した平成の小説家たちはそうはいかない。〈語るべき内容がないだけではなく、語ろうとする姿勢すら保ちづらくなってい〉ったというロスジェネ世代の作家たち。それに先行する九〇年代以降の女性小説家たちは人間以外の異種を語り手にして小説のナラティヴを再編成しようとした。新世代作家たちの文学史的位置づけが鮮やかだった。
2019/06/05
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