数学小説確固たる曖昧さ
数学小説確固たる曖昧さ / 感想・レビュー
absinthe
ソクラテスの哲学対話篇のように、対話によって数学の面白さを語る。話題の大半はユークリッド幾何学だが、非ユークリッド幾何学やカントールの対角線論法も話題に上る。平行線は交わらないのか、ユークリッドの第五公準への想いが熱い。数学に興味があったが専門には学ばなかった、非数学の理系向けだが文系でも楽しめるだろう。しつこいくらいに繰り返される論駁は読む人を選ぶだろうが、ツボに嵌ればきっと楽しいはず。
2021/02/25
ペグ
数学と聴くと頭が真っ白になってしまうほど苦手な私が、何故この本を手にしたのかといえば、まずこの題名。なんと言う魅力的な!そして東江さんが翻訳を熱望していらしたという事。この小説は三つのパーツで出来上がっていて、主人公の祖父と判事の問答は数学と宗教、人生に対する考え方など、とてもひきこまれました。途中入り込むピタゴラスからリーマンまでの名だたる数学者たちの書簡なども興味をそそられ数式飛ばしで一気読み。兎に角文句無しの面白い小説です‼︎
2016/04/23
やまはるか
12歳の誕生日に祖父から貰った電卓に三桁の数字、342を続けて二度打ち込むと、打った数字を知らない祖父がそれは13で割り切れると言う。何と割り切れた。さらにその商を11で割り、次に7で割るようにと。すると元の342が出た。「わあ、わあ、ぼくが最初に入れた数字だよ。バウジ、何をやったの?」少年の興奮が伝播して、思わず電卓を叩いて確かめる。ピタゴラスの定理を中心に真理追究が主テーマ、参加できるところは参加する。実在の数学者ラマヌジャンも手紙で登場するが主人公のモデルは示されず架空物語と著者注記にある。
2022/04/21
29square
タイトルからテッド-チャン「ゼロで割る」的なものや、あるいは森博嗣的展開を期待したが「数学ガール」的あるいは学研シリーズな方であった。話は面白いが文系にはやはり集合論辺りからつらいものがある。
2021/11/07
やす
人生は真理を確信する営みとしたとき、そこに、信仰によって到達すべきか、厳密な論理によって到達すべきか。主人公の祖父は20世紀初頭のアメリカで涜神法によって裁かれようとしている。公衆の面前で信仰には明確な根拠がないと主張したためである。祖父は数学こそが自明な理の積み重ねで世界を表現する人生の目的に足るものであると主張。祖父と判事との対話の記録を主人公は辿る。同時に数学の無限に関する講義を受け、人類が無限を飼い馴らす歴史を学んでいく。祖父の辿った道、ユーグリット幾何学の危機、集合論の危機などがうまく融合する。
2014/08/21
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