文庫 昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか (草思社文庫 お 4-1)
文庫 昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか (草思社文庫 お 4-1) / 感想・レビュー
ゲオルギオ・ハーン
昔話の主要人物に必ずお爺さんとお婆さんがいるのはなぜかという疑問からスタートして、江戸時代と平安時代を中心とした昔の高齢者のことをあれこれ書いたエッセイ。章を分けているが書いている内容が割と似たり寄ったり、時代もいろいろととぶことなどちょっと中途半端な印象はあるが、昔の高齢者の「弱者として踏みつけられながらも逞しく生きていく」ということが本書の伝えたいメッセージではないかと思いました。けっこう生々しい内容なので私よりも2、3まわり上の方をメインターゲットにしているのかなとも思いました。
2021/09/22
アミアンの和約
昔話を題材に現代の高齢化問題に迫るという意欲作。私自身、昔話に老人が多いということに気付かなかったこともあり、自分にはない視点を提供してくれた点で斬新なものであった。老人は長い間醜い弱者とされていたが、その弱者性が時には強みともなる。高齢化問題に限らず、弱者とは何か、人とはかくあるべきか考えさせられた。
2024/08/31
葵
なぜ昔話では、老人が鬼や神と化すのか。それは老人が有する物語性だそう。老人には、その長い人生にふさわしい、変化に富んだ物語がある。老人ほど、容姿・言動・性格において、変化に富んだ存在はない。それは一個人の歴史を見てもそうだし、老人同士を比べても、「これが同じ人間なのか」と驚くほど。老人は「キャラクターが立っている」のだ。そういう極端さが、神にも鬼にもなり、いいお爺さんと悪いお爺さんという書き分けにつながっている。私も、少しでも神寄りになれる生き様を。
2017/06/15
じじちょん
福祉制度が確立されていて、「お年寄りは大切に」と道徳観も身に付いている現代であっても孤独死や貧困はなくならない。ましてや昔の暮らしは…。古文書や昔話を紐解きながら、死ぬまで働く貧しい暮らし、年おいても独り身が珍しくないシビアな暮らしぶりを解説している。 侘しい話が多いが、性愛や豪快な昔の高齢者の話も面白い。
2020/03/14
よみ
思いの外老人問題に切り込んだ内容でした。 「健全な老人は、尊敬・愛着の対象」「いったん老人に心身の衰えや、老衰・痴呆などの症状が現れ始めると、彼らは社会のお荷物となり、冷たくあしらわれることになる」…って、その通りなんでしょうけど、世知辛いですなぁ…。 昔話における老人が案外若かったのではないか、という認識が必ずしもそうではないことがわかっただけでも、読んでよかったです。 「黄金は大事にしてくれる人のところへ集まるだけだ」というのを肝に銘じておきます。
2017/07/27
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