バットマンの死: ポスト9・11のアメリカ社会とスーパーヒーロー
バットマンの死: ポスト9・11のアメリカ社会とスーパーヒーロー / 感想・レビュー
田中峰和
ノーランのバットマンシリーズは、彼なりの価値観で従来のものと大きく改変されている。従来アメリカの文化的貴種流離譚に位置づけられたバットマン神話は、悪人に対してさえ避けてきた殺人を犯すことで崩壊する。ポスト9.11のアメリカ社会は、20世紀までのヒーローを受け入れないのか。中東から石油資源を搾取し、何の罪悪感も持たなかった西欧諸国は、9.11でショックを受け敵討ちに奔走する。ベトナム戦争は共産化する世界救済の使命があったが、イラク戦争は単なる復讐でしかない。本書が残念なのは、映画未鑑賞者には解りにくいこと。
2019/04/12
堀川丸太
「彼が露わにしようとしているのは、われわれが資本主義的システムに無関心に依存しており、毎日ものを安く享受するために、排除され搾取されるものの隠され犠牲を抑圧しているという事実すなわち資本主義の矛盾なのである。」
2023/09/11
コウみん
ジョーカー公開記念で図書館で借りた本。 今年はバットマンの80周年でもある。 ノーラン監督の『ダークナイト』の作品論から今のアメリカ社会でのバットマンとジョーカーの意味を語っている。 小田切先生の本と似ている内容が多い。
2019/10/07
渡邊利道
クリストファー・ノーラン監督の映画バットマン三部作に、911以後の不安定なアメリカの表現を見出す長編論考。映画の物語と設定の分析を積み重ねてバットマンとジョーカーの象徴するものに迫る。ストレートな作品論で読み応えがあった。前作『スーパーマンの誕生』と併読すれば話がぐっと立体的な面白さを帯びる。
2018/09/21
ゐづみ
恐怖や暴力で以って大衆を扇動しようとするテロリストであるヴィランズと、同様の方法で現行社会を維持しようとするバットマン。9.11以後、アメリカ社会の象徴たるスーパーヒーロー映画はよりリアリスティック作風が要請され、イデオロギーの対立を描かざるを得なくなっている。視点としての新奇さはあまりないが、ダークナイトトリロジーを一貫したテーマで論じているモノグラフは、和書ではほとんど(多分一冊も)なかったので、楽しく読ませて貰った。
2018/07/27
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