ヴァルター・ベンヤミン著作集 12 (12) ベルリンの幼年時代
ヴァルター・ベンヤミン著作集 12 (12) ベルリンの幼年時代 / 感想・レビュー
踊る猫
甘美な「幼年時代」を描いた美文、を期待して読んだ。もちろんこの散文は野村修の訳文じゃなくても充分美しい。だが、ベンヤミンの姿勢は単に幼年期に溺れて退行していくわけではない。性の目覚めまで果敢に掘り下げて描く姿勢はプルーストの姿勢とも共振するものがあり、細部まで思い出して描き切ることは彼がむしろアグレッシヴに考察する書き手であったことを表しているとも言える。時流に逆らって、「いまここ」にない過去を現前させる。だからこそ『失われた時を求めて』にも似たアクチュアルなテクストとして読める。久々にクラクラする読後感
2020/04/01
うえ
1932年、スペイン東方のイビーサ島滞在中に書かれたベルリン年代記と、「1900年前後のベルリンにおける幼年時代」を収録している。年代記は1970年に遺稿をショーレムが編集したもの。「わたしたちは、忘れたことを二度とふたたび完全に取り戻すことはできない。そしてこれは、おそらくいいことなのだ」「わたしたちの「夏の家」ははじめポツダムに、つぎにバーベルスベルクにあった。そのときわたしたちは、外に、つまりベルリン市から見て外に住んでいた。しかし夏のほうから見れば、それは内であった。夏のなかに巣籠もっていたのだ」
2022/11/01
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