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たんぽぽのお酒 (ベスト版文学のおくりもの) (文学のおくりもの ベスト版)

たんぽぽのお酒 (ベスト版文学のおくりもの) (文学のおくりもの ベスト版)

たんぽぽのお酒 (ベスト版文学のおくりもの) (文学のおくりもの ベスト版)

作家
レイ・ブラッドベリ
北山克彦
出版社
晶文社
発売日
1997-08-01
ISBN
9784794912411
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たんぽぽのお酒 (ベスト版文学のおくりもの) (文学のおくりもの ベスト版) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

半年遅れのブラッドベリ追悼。この物語の舞台はイリノイ州グリーン・タウン。架空の街と思われるが、ブラッドベリが少年期を過ごした街がその背景にあるようだ。時は1928年の夏。翌年がウオール街に端を発する世界大恐慌の年だが、まだその影はない。こうして、場と時といったトポスだけが特定されるのだが、全体を貫流する明確なプロットといったものはない。主人公はしいて言えば、12歳の少年ダグラスだ。そして、この長編小説には全編にわたって死とその影がつきまとっている点に大きな特徴を持つ。夏の光の背後には深い闇があるのだ。

2013/01/13

ケイ

少年時代の夏。長い夏は、本当に特別なもの。夏をつかまえて瓶につめた、タンポポのお酒。この言葉を口にすると夏の味がするっていう、詩的な少年。自分たちのことを、ほら書きとめなちゃ。すべすべした肌の少女たちに若い頃の話をすると嘘つきだと言われる老女と、青年から恋される老女と、どちらが残酷な目に遭っているのかしら。夢の機械を作り出す男達とその息子たち、理解しない女達。日の暮れが遅いから、少年たちの冒険も長くなる。何かが起こりそうで高揚する長い夏も、ある朝目覚めたら終わっている。そんな夏は、毎年は来ない。

2018/10/24

mocha

この夏の催眠本。けして面白くなかったわけじゃなく、心地よくて眠ってしまう。生きる歓びに気づいたダグラス少年の、ひと夏がつめこまれた本。全てが輝く草原の朝、けだるい午後、秘密を隠し持つ渓谷の夜。愉快な日もあったし、つらい別れの日もあった。秋を迎えた今、どの1日もたんぽぽのお酒の琥珀色の瓶の中でたゆたっている。とりとめのない夢のような読後感。

2015/08/30

MICK KICHI

1928年、イリノイ州グリーンタウンのひと夏の出来事を、作者の少年期の分身、ダグラスの眼を通して語られます。たんぽぽを摘み貯蔵酒を作る、「幸せを生む機械」発明しようとする男、「グリーンマシーン」と呼ばれる軽自動車で町中を疾走する老姉妹、90歳の女性と若者の儚い恋物語、友人との別離、幸せを品物と交換する移動骨董品屋… 次から次へと現れる幻想的な出来事と登場人物、その夏の中で初めて彼は生きている事を実感する。ひょっとしたら自分もそんな夏を感じていたのかもしれない、きっとそうだろう。そんな気にさせてくれます。

2018/07/16

ユメ

過ぎゆく夏を偲んで読む。十二歳の少年ダグラスの眼を得て駆け回れるのはなんと贅沢なことだろう。少年が感じた生きるよろこびが即座に血となって体内を巡る。イリノイ州グリーン・タウンでは、たんぽぽのお酒を作るのが夏の儀式。たんぽぽのお酒。これから私も、夏が恋しくなったらこの言葉を舌の上で転がすことにしよう。鉛筆で書きつけた感動と恐怖が、時の流れに逆らえずにありふれたものに成り果ててしまっても、たんぽぽのお酒を口に含むたび、ダグラスはこの年の夏を思い出すことだろう。この本を読んだことで、私の今年の夏は終わった。

2016/09/01

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