ボルヘス怪奇譚集 (晶文社クラシックス)
ボルヘス怪奇譚集 (晶文社クラシックス) / 感想・レビュー
かりさ
ふわふわと浮遊するかのような読み心地。それは決して違和感などではなく、私にとってはこの上ない幸福な心地の幻想文学の数々。「物語の精髄は本書の小品のうちにある」。こう記すボルヘスの言葉通り、彼が東西古今のあらゆる書物から選び抜いた92篇の怪奇譚集。ボルヘスが選んだ物語だもの、それはもうめくるめく世界が次々と…夢か現かのような不思議なお話しがたんとおさめられているのです。それは物語自体印象は薄くとも、時折ふわっと風にのって記憶の欠片を見つけるように心に刻まれてゆく読書。ふくよかな時間。
2016/12/06
いちろく
古今東西の文献から収集された一行から数ページで終わる短編集。怪奇譚という事で身構えたけれど、幻想的な話や奇妙な話等、ジャンルは様々で興味深く最後までページを捲った。気が付かなかった暗喩やメタ的な要素も多くあるのだろうけれど、描かれた物語を有りのまま楽しめたから、今の私にはそれで良い。物語の長短は関係なく何か残るモノが有るか?否か?なのかもしれない、とこの手の本を読む度に感じる。
2019/11/09
凛
ボルヘスと「モレルの発明」のカサーレスが編した、数行~数頁の短編集。古代中国の短編は元々好きだったので、その体の古今東西verを読めて楽しかった。全体を通して編者が何に執着してるかぼんやりと感じる。五行未満の話が好き。でも一番心に残ったのはサンチャゴ・ダボベの「汽車」でした。「荘子の夢」が「胡蝶の夢」じゃない辺りに翻訳感。暇な時にパラ読みしたい本だなぁ。
2014/03/10
keitatata
古代中国から現代まで。老子からカフカまで。物語は最短で1行、最長でも5ページまでの短くて奇妙な物語が92篇も入った短編集。短いながらもキレがあり、その短いナイフでブスリと神経を刺してくる。その奇妙さは話が奇妙というよりも、構造が奇妙というべきか。物語の構造により現実世界の構造を転覆しようとするかのようである。宇宙のルールにメスを入れ、切り開き、そこに人知を越えた何かの存在を感じさせるような物語ばかり。奇妙な物語構成のサンプルがたくさん、まさに物語の見本帳。
2012/10/04
jun_dm
興味を惹かれる話が盛りだくさんだった。落語によく出てきそうな話もいくつかあった。/「ナサニエル・ホーソーンのノートブックに散在するテーマ」/「隠された鹿」/"処刑が彼の夢を中絶する"/「指し手の影Ⅰ」-ヴォネガット「王様の馬がみんな」に似てる/「磁石」(自由意志はない)/「汽車」(サンチャゴ・ダボベ)-これが最も印象に残った/「学問の厳密さ」(スアレス・ミランダ「周到な男たちの旅」)-地図作りが厳密になって帝国そのものと同じ大きさになる/「不眠症」(ビルヒリオ・ピニェーラ)-死んでも不眠症は治らなかった/
2014/11/27
感想・レビューをもっと見る