大あらし (文学のおくりもの 9)
大あらし (文学のおくりもの 9) / 感想・レビュー
Aminadab
正月に古書店の百均で入手。傑作『ジャマイカの烈風』は既読。本作も読み応えあり。1929年のカリブ海。排水量9000トン、乗組員80人の貨物船が未曾有の巨大ハリケーンに巻きこまれる。機関全速で舳先を風上に立てようとするが及ばず、船体は横向きにされ、と思えば煙突が吹き飛ぶ。帆船とちがい汽船ではボイラーが止まれば棺桶同然、排水ポンプも動かない。こういう難船あるあるに加え、死に直面した船長、航海士、機関士、中国人水夫たちの、神の救済、死の意味、共産軍に加わるまでの過去など、心中のもだもだを克明に追っていく。佳作。
2020/01/27
topo
1929年当時の技術の結晶、汽船アルキメデス号がカリブ海で予期せぬ巨大ハリケーンと遭遇。 アルキメデス号と乗員の運命や如何に─。 乗員たちの死闘、克明に描かれる心情、息つく間もなく襲い来る嵐の描写。頁から溢れる怒濤のエネルギーに圧倒された。 傑作海洋小説。
2023/04/11
がんぞ
海洋天気予報も気圧図も無い1929年夏、あやうく転覆や沈没を免れた汽船の物語。「空気の塊は固体のように振る舞う」「これが双子台風であることに船長はようやく気づいた」航海というより困難な漂流が続く。食料を船長に持っていく忠誠心、「恥ずかしいことをした。オレンジを一人で食べてしまった」。ある少年航海士は一心にポンプを動かし寝ているか起きているかわからない幻想。無線機はあるが、太陽か星が見えないと自船の位置が不明で救助求めようが無い。最後、救助船に感謝しながら、少し蒸気が出せるのを誇示して遭難ではないと自負する
がんぞ
カリブ海の嵐に船長は暗礁の多い水域に退避するより、操舵で船首を風上に直面して乗り切る事を決断した。操舵室にあってはならないマットが舵輪にはさまり…ボイラー室も小さなミスで大火災!ハッチは二つとも刎ね飛ばされ水煙が浸透…二昼夜休みなく女子便所から石油を少し流し続ける(水面安定のため)ディックの行為が転覆から免れさせた(一・二等航海士も勇敢にドラム缶を届けた)。彼と一支那人船員の死の間際に見るような生涯の回想あり‥救助船に曳航され食事も届けられ、上級・下位入乱れての食事で船長はわれ知らずディックに金時計を授与
2017/04/07
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