マウス―アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語
マウス―アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語 / 感想・レビュー
ケイ
とても不穏な表紙だ。作者のスピーゲルマンについては、柴田元幸さんの『ナイン・インタビューズ』において読んでいて、どんな人だろうかと興味はあったのだが、この度ようやく、インタビューにて彼が話していたホロコーストや、アメリカにおいてコミックをいかに向上させるかなどの話と、実物が結びついた。これは、ポーランドに住んでいた彼の両親がいかにホロコーストを生き延びたかが綴られたシリーズの第一章。プロローグで、まず心の温度が下がった気がした。
2016/06/01
NAO
アウシュビッツを生き延びた父ヴラディックから聞きだした体験をコミック化した作品。過去を語る現在の父と、当時の状況が交互に描かれている。この巻はまだ収容所に入る前だし、両親一族が裕福だったこともあり、悲壮感はまだそれほどでもない。動物として描かれていることについては、ユダヤ人は猫(ナチス)に追われるネズミであるという暗喩と、動物として描かれることで個人を識別しない、これがユダヤ人全体としての体験であるという作者の意図を感じる。
2019/03/31
扉のこちら側
初読。ユダヤ人はネズミ、ナチスはネコ、ポーランド人はブタという風に漫画形式と、戦時下のヨーロッパと現在のニューヨークを行き来しながら展開することで、父親たちの苦難の歴史を受け継ぐ子どもの姿を描いている。
2012/12/09
syota
2巻構成になっていて、本書は前編にあたる。アウシュビッツを生き抜いた父の体験を息子が漫画化したもので、本書では父の若い頃から第二次大戦開戦、ゲットーや隠れ家での生活を経て逮捕されアウシュビッツへ送られるまでが描かれている。ユダヤ人が鼠、ドイツ人が猫、ポーランド人が豚と動物へ置き換えているのが特徴で、これにより登場人物の人種が一目で分かり内容がとても理解しやすくなっている。文芸書専門の米パンテオン・プレス社が初めて出版したコミック本としても話題となった。内容についての感想は下巻読了後に一括記載したい。
2023/08/11
Nobuko Hashimoto
1992年ピュリッツァー賞特別賞。作者の父はポーランドのユダヤ人で、捕虜、隠れ家生活、収容所を生きのびた。妻も共に生還したが、1968年に自殺する。そのことが父と子の心の傷となり、現在の親子関係にも影響している。日本のマンガを読みなれた目には、コマ割の単調さ、線の荒さが気になるかもしれない。ユダヤ人をネズミに、ドイツ人をネコに描くといった隠喩がされており、人物の見分けもつきにくい。しかし、そうした表現はまさに個人を個人として識別しない状況をよく表している。
2016/06/04
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