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吉本隆明全集10: 1965-1971 (第10巻)

吉本隆明全集10: 1965-1971 (第10巻)

吉本隆明全集10: 1965-1971 (第10巻)

作家
吉本隆明
出版社
晶文社
発売日
2015-09-19
ISBN
9784794971104
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吉本隆明全集10: 1965-1971 (第10巻) / 感想・レビュー

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壱萬参仟縁

フロイト体系の欠点は、社会における幻想的共同性が、家族あるいは男女における幻想対の表出と逆立するものという洞察の不在(25頁)。弱点を堂々と指摘できるのが凄い。心的現象の異常と病的の区別と連関は、それを自然体としての心的現象の異常と病的という概念に限定すれば、神経症と精神病との区別と連関に対応(ゴシ太55頁)。妄想あるいは幻覚の対象としてやってくるものは、無関係と関係の同時的な二律背反としてしかやってない(217頁)。

2015/11/25

猫丸

心的現象論序説、共同幻想論所収。いずれも再読。3幻想の位相を仮定し、そこから論理の運動だけでどこまでのことが言えるのか、その試験運用である。生理的身体と外部環界から疎外されることによって生まれる心的領域に、時間化度、空間化度の両軸による座標を入れ、心的現象の占める座標と、そのベクトル変容によって、異常、夢、心像等の解明を試みる。批判も多い論考だが、誰もやらないことをやった結果、ひとつのパースペクティブを得るところまで進んでいる論理的足腰の強さを賞賛すべきと思う。

2018/08/18

 

吉本の思想はラカンに似ているところがある。要するに、自己幻想、対幻想、共同幻想を、それぞれ、現実界、想像界、象徴界にそれぞれ割り当てたい誘惑にかられる。もちろん、フロイトを大いに参考にした『心的現象序論』からの発展/拡大を『共同幻想論』であると考えるならば、そう考えても当たらずとも遠からず。ただ、吉本の場合は対幻想(家族)に共同幻想の解体の可能性を求めたわけだが、それは高度経済成長期という時代的担保があればこそだが……。対幻想それ自体がもはや不可能になっている現在においては 、理論的破綻は不可避だ。

2023/10/03

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