KADOKAWA Group

Facebook X(旧Twitter) LINE はてブ Instagram Pinterest

吉本隆明全集19: 1982-1984 (第19巻)

吉本隆明全集19: 1982-1984 (第19巻)

吉本隆明全集19: 1982-1984 (第19巻)

作家
吉本隆明
出版社
晶文社
発売日
2019-04-25
ISBN
9784794971197
amazonで購入する

吉本隆明全集19: 1982-1984 (第19巻) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

猫丸

たとえ個々の作者に矛盾する形であろうと表現の先端には現在という大きな作者(マス・イメージ)が存在する。この作業仮説のもとで主にサブカルチャー方面に漂う無意識を探り当てようとした試み。ところがその過程で文学者による反核声明なる事件に遭遇。『「反核」異論』へつながっていった。19巻はこのあたりの経緯を収めている。 世間的には誤解されているかもしれないので論点を整理する。吉本の反反核論は反「反核運動」論である。内容を問わず運動理念の根底に党派的欺瞞が含まれるならばそれを認めない。ハサミは使いようだがバカは違う。

2019/12/15

小鳥遊 和

福島の廃炉作業の報道を読んだのを機に既読の『「反核」異論』について記しておこうと思い、本書に行き着いた。幸い、無名氏と猫丸氏によるすばらしい評を読めた。吉本の抽象度の高い原理論「自然科学的な『本質』からいえば、科学が核エネルギイを解放したということは、即自的に核エネルギイの統御(可能性)を獲得したと同義である。半衰期がどんなに長かろうと、放射性物質の宇宙廃棄(還元)は、原理的にはまったく自在なのだ」に異を唱えるつもりはないが、「即自的可能性」を手にした段階で実際に原発を稼働してよいとはどうしても思えない。

2024/08/27

 

「反核『異論』」は当時かなり論争になったとは知らなかった。恐らく、吉本の場合は、「マス・イメージ」論と表裏一体で、資本主義の発展/進歩のヘーゲル(=単純なマルクス理解)弁証法理解よろしく核の危機も発展/解消されるという認識があったのではないか。恐らく、サブカルチャーなどの飲み込みの早さと裏腹に吉本自身のお気楽な未来への認識もまた表裏一体であろう。要するに、吉本の80年代以降、はっきり言うが、鼻持ちならない「先進国意識」みたいなもんは、「反核」を言っていた知識人とも心象は同じなのだ。

2023/11/13

感想・レビューをもっと見る