大聖堂-果てしなき世界(中) (ソフトバンク文庫)
大聖堂-果てしなき世界(中) (ソフトバンク文庫) / 感想・レビュー
翔亀
【コロナ24-2】これだけたっぷりと描かれると、気分はもう中世だ。それにしても作家は意地悪で、ヒーロー、ヒロインの浮き沈みが激しすぎる。前作12世紀の『大聖堂』では悪役の騎士は非道の塊だったが生の暴力を直情で剥き出しにするだけなのでまだ許せたが、本作の悪役修道院長は陰湿そのもの。前作の修道院長が「神のために」困難を乗り越えていったのと対照的に、本作の修道院長ゴドウィンは、「神のために」が抑圧の手段と化している。14世紀ともなると教会も堕落し民衆が離反していく時代を反映させようとしているのだろうが、↓
2020/06/30
キムチ
上巻から広がった情景に引きこまれ のめり込む。芯の通った女性の描き方が絶妙、女子修道院の存在の意味が見えてきた。グウェンダとカリスのあり様が対比的。中世の暗闇が広がって行き、英仏戦争、異端裁判と魔女狩り、ペストが牙を剥いて行きつつある。背景は領主の横暴と淫乱、俗物の修道院、奔放な性とそれを逆手にする人間の逞しさ。生まれ 赤子を見て解る父親っていうのに嗤う。グウェンダらが生きていくのに途方に暮れる農園の風景にはブリューゲルの絵画が浮かぶ。イングランドからフランスに渡ってすぐ会話が出来るっていうのが不思議。
2017/03/26
kinnov
百年戦争、魔女狩り、ペスト。中世欧州の特大トピックスが矢継ぎ早に繰り広げられる。教科書的でない、血の通った登場人物たちの視点で語られるそれらの出来事はリアルだ。残虐の限りを顕にする戦争。信仰という免罪符による狂気。時代の価値観から逃れられない感情と理性。前作を遥かにしのぐ舞台の展開が物語をより大きなものにしていく。翻弄される人々の姿に、喜怒哀楽全ての感情を引き出される。残り一冊と言わず、いつまでも続けば良いのに。
2018/02/27
KAZOO
読むのに時間がかかって、登場人物の名前を忘れてしまいます。このような小説は一気に読まないといけないのでしょうね。ただ体力がついていけなくなってしまってだめですね。昔はトルストイやドストエフスキーなどを読んでたのですが。人間関係のもつれが結構昔に比べると私自身だめになってしまって。前作のほうが大聖堂が主人公のような感じがしましたが。それでも読むというのは魅力があるのでしょうね。
2014/05/04
タッキー
この中巻では、徐々に悪役がはっきりと見えてきて、それと共にむかつき度もアップ。修道院長とラルフは中でも最低。でもこの作者、基本的に悪役は女性を強姦するばっかりで、もう少し悪役の作り方を考えてほしいところ。そしてこの巻では、異端裁判が登場。真剣に裁判をする様子に、中世の時代は神に対して非常に敬虔だからこその裁判と思いました。終盤は欧州を席巻するペスト。死者が増える中、悪い奴ほど生き残る。という法則が当てはまるのかどうか、またカリスの運命は?すごく気になる展開で、いよいよ次は最終巻です!
2021/12/30
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