大聖堂―果てしなき世界 (下) (ソフトバンク文庫)
大聖堂―果てしなき世界 (下) (ソフトバンク文庫) / 感想・レビュー
キムチ
巻末を書いているのは亡き児玉氏。時代を感じさせる。前作は大聖堂を心の絆、支えとして精神世界が素晴らしかったが今作は宗教のよりどころが因習に凝り固まる権化となり、人々の心が揺れるさまを4人の彼 彼女らに託し描いている。着地が理想的という向きもあろうが私はすがすがしいマリア像の表情にも似た感懐を抱けた。下巻は数回 うねりを見せ盛り上がる。前作の子孫らが血の底に沈み 沈着、慈愛、凶暴、医学探求心、建築センス等々みせる。氏も育ちも・・なのだ。カリスとマーティンが撚り合す肉欲精神愛も物語を引っ張りたまらないね。
2017/04/28
真理そら
『大聖堂』の続編。主人公は大聖堂建設という夢を持つ建築職人マーティンのはずだがカリスの生き方を描く方に力が入っている気がする。そのためマーティンがなぜカリスをそこまで好きなのかが伝わりにくい。カリスが女の幸せは妻として男を支えることなのかを悩む姿についていけない。中世イングランドの暴力やセックスや諸々の欲望にまみれた世界を読むのは楽しかったけれど中心を貫く愛の物語に共感できない自分が悲しい。出世していくマーティンの弟ラルフの満たされない思いは共感できた、ろくでなしだが魅力的ではある。
2019/12/26
翔亀
【コロナ25-3】1348年、黒死病がイングランドを襲う。「ドゥームズデイ・ブック」【コロナ11】のオックスフォードの村や、「異星人の郷」【コロナ14】のドイツの村は全滅したが(ストーリー上の都合もあろう)、ここキングズブリッジでは多くの住民を喪うが、全滅するわけではない。史実では人口は半分とか三分の一なったなどと言われるが、残された人々のペストとの戦いの歴史が描かれる。ペストの第二波、第三波が襲ってくるのだ。3か月後と10年後に。旧態依然の聖職者と対抗しながら、診療所を作りついには街の封鎖に踏み切る↓
2020/07/05
kinnov
現実と異なり物語は必ず終わりを迎える。登場人物たちと中世欧州を生きた今、終わりを迎えて欲しくはなかった。敵役ですら愛しい。かなり残虐だったり不衛生だったり、宗教の強さに違和感も抱くが、歴史の中に生きるとはその時代の価値観を共有する事だとすれば、これもまた読書の醍醐味だ。2つの時代の大聖堂を巡る物語の後、この巻の表紙に描かれた天使像が胸を熱くする。彼女だけでなく、全ての登場人物が英国で一番高い場所からキングズブリッジを見守り、街を行く人々は見上げればそこに彼等の存在を感じる事ができる。物語の力が作る幸福だ。
2018/03/02
まえぞう
シリーズ第2段は前作のおよそ200年後の14世紀、英仏百年戦争の頃のお話しです。第一身分(聖職者)、第二身分(貴族)に苦しめられる農民や商工民。どの身分にもいい奴も悪奴もいて、英国一高い塔を建てたい建築職人、医師になりたい商家の娘、思い人との幸せな結婚を目指す貧し農家の娘をメインキャラに、前作同様、様々な人々が絡み合う物語でした。イングランドの一地方という設定なのに、ホントに壮大な話しだと思います。
2023/10/13
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