巨人たちの落日(上) (ソフトバンク文庫)
巨人たちの落日(上) (ソフトバンク文庫) / 感想・レビュー
のっち♬
幕開けは第一次世界大戦前夜。英国の上流と下流社会にドイツ、米国、ロシアを加えた五つの家族の視点から世界情勢を掘り下げていく歴史大河ロマン。著者の批判の矛先はタイトル通り"巨人たち"、すなわち支配者層に向かう。戦争を楽観視する彼らの愚鈍を描く筆致はいかにも英国的なシニカルさ。メロドラマ要素に最も貢献しているのが、戦争で恋仲を引き裂かれる英国貴族女性とドイツ貴族男性だろう。ベタな構図が功を制して所々冗長になりがちなストーリーを引き締めている。ロシアの兄弟やウェールズなど他の視点も負けず劣らず波瀾万丈で魅力的。
2018/07/01
遥かなる想い
大聖堂が面白かったので、ケン・フォレットの作品を捜して読んだ。舞台は第一次世界大戦のヨーロッパ。ウェールズ・ドイツ・ロシアに暮らす人々の運命を描いた大河小説である。大聖堂ほどの迫力はないが、20世紀の残酷な歴史を今の時代に蘇らせてくれる。
2011/09/03
真理そら
第一次世界大戦前夜のドイツ、イギリス、ロシア、アメリカの各層の人々の生活を描いていて興味深く読める。イギリスとロシアの貴族階級がタイプは違っても、こういうことではこの階級は滅びるよね、と思わせるいやらしさがうまく描かれている。上巻では最低の伯爵フィッツの美しさが想像できないのが悔しい。エセルの逞しさが魅力的。
2020/01/04
キムチ
2010年の作品、シリーズ物だが逆行して読んでも楽しめた。舞台は第一次大戦、文字通り「巨人たちの落日」の前夜風景である。5つの家族が大海の荒波にもまれる小舟のように右往左往する様子が掴める。「戦争がそこまで迫っているのに見ているしかない」巻末に人物図を網羅している。この小説の特徴は史実にきっちり基づいていること。筆者曰く、資料を研鑽し、「言葉」の感触を丁寧に拾い上げているようだ。作品内の登場人物は貴族・政治活動家・大使館付き武官・補佐官等各国のコアに関わるような人が多く、執筆に神経を使ったのではと感嘆する
2015/05/10
yutaro13
最近読書から離れていたので久々に長編小説でも。ケン・フォレットの『大聖堂』とその続編ではヨーロッパ中世を舞台とした壮大なスケールの物語を堪能させていただきましたが、こちらの作品は20世紀初頭、第一次世界大戦直前のヨーロッパが舞台。主人公たちは架空の人物だが、実在の人物や事件を絡めながら歴史物語にリアリティを与えていく筆致はさすが。登場人物たちの願い虚しく、いつのまにやら戦争は不可避の状態へと陥り、1914年8月4日、イギリスがドイツに宣戦布告したところで上巻完。
2020/02/12
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