巨人たちの落日(下) (ソフトバンク文庫)
巨人たちの落日(下) (ソフトバンク文庫) / 感想・レビュー
のっち♬
下巻はロシア革命から終戦まで。ロシア・フランス・英国に包囲されて荒廃したドイツに課される巨額の賠償金、こうして経済は更に疲弊し、終盤でヒトラーのミュンヘン一揆も起こるという負の連鎖が次作への布石となって不穏な余韻を残す。「わたしたちは平和を説きながらも常に復讐をたくらんでいる」—進行はやや停滞気味になってくるが、各国の見解をかいつまんで代弁させるので読者に歴史を俯瞰的に眺めさせる。自らの人生の主人公として大戦を生き抜いた主要人物たち、まだまだこれからという感じの幕切れが続編へと誘う。特にレフの転身ぶりは。
2018/07/04
遥かなる想い
大河小説の終わり方…やはり難しい。5家族を描きながら、第一次世界大戦・ロシア革命前後を描くという取り組みは雄大だが、どうしてもフォーカスがずれる感じ。チャーチルやレーニン・トロッキーが出てくるのは刺激的だが、やはり終わり方が温和すぎる感じ。結局みんな幸せになった気がするが、これは次の大河小説への序章なのだろうか。
2011/09/10
真理そら
第一次世界大戦、ロシア革命、ヒトラーの台頭の素地はどこにあったのか等々とても興味深く読んだ。国際連盟設立の際、日本から出席した牧野男爵が「宗教の自由」「人種差別の撤廃」を訴えたのに列強の反発にあう場面などもなるほどと思わせられた。複数の主役たちが戦前には想像もしなかった立場になって生き延びている。フィッツが貴族の社交界の変化に持っている感想が『日の名残り(カズオ・イシグロ)』と重なり合って、日の名残りを再読しようかという気になってしまった。
2020/01/08
キムチ
2、3部を先に読んだのは失敗。8人の男女を歴史の俎上にのせたダイナミズムを堪能しきれなかった。時代が遡りすぎた為か、はたまた海の向こうの史実という事で感覚的に隔靴掻痒という為か。貴族はじめ国の上層部がメインに描かれているせいもあり、綺麗事のうちに大団円となっている感もあり。国際連盟の中枢権力が欧州からアメリカに推移していくのは人々の生活や愛憎の相克を具になぞっている有様で感じれる。ロシア革命、大恐慌そして軍事での頭脳戦!この後、時代は一層にスパイ暗躍、科学的戦いへへ変わっていくのだろう。
2015/06/02
りー
誰も望まないのにケチ臭い欲とプライドからグダグダで戦争が始まり、始まったら兵士と物資が無くなるまで止まらず、やっと停戦するもドイツに悲惨な賠償を強いて、この下巻の最後にはヒトラーが登場している。巨人たちが落ちていったのは、人々が現実を知るようになったからなのだと思った。二次大戦は、一次大戦の終わりにもう始まっていたのだ。ヨーロッパ貴族階級のグダグダさに溜め息をつく読書。当時の空気感の変化を知るにはとても良い本だった。エセルの勝利にガッツポーズ!
2022/01/02
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