情念戦争
情念戦争 / 感想・レビュー
星落秋風五丈原
二十世紀は性欲と物欲という二大情念に捕えられている人間をどうすれば解放できるか?というテーマにマルクスとフロイトが挑んだ。両方を完全に満たした人間とはプレイガール&プレイボーイ。では彼らは二十一世紀において幸福な人間と言えるか?フランス革命時の立役者ナポレオン、タレーラン、フーシェ。それぞれ異なる情念の持主がぶつかる。ジョセフ・フーシェは陰謀情念、移り気情念はタレーラン、熱狂情念はナポレオン。バルザックはナポレオン最大の失敗は、タレーランとフーシェという二つの偉大な才能を使いこなせなかったことだと断定。
2023/09/24
きりぱい
人間というものは、物欲と性欲だけでは充たされず、第二、第三の段階の情念まで満たされて初めて幸せになれるらしいのだけど、上はもう、普通の幸せでは飽き足りないだけみたいな、陰謀・移り気・熱狂なんて情念だから、そんなもの簡単には・・ところがそれらを充たした男たちがいた!フランスは革命の時代の警察大臣フーシェ、外務大臣タレーラン、皇帝ナポレオンである。烈しく対決あるいは協力と、3人の評伝が、情念の充足感に突き動かされるように描かれていて読ませる。悪い妻なのにアゲマンだったジョセフィーヌなど女たちや脇役も面白い。
2012/07/06
彩也
文庫版の題は『ナポレオン フーシェ タレイラン』。その名の通り、彼らが三つ巴(というか、三すくみ?)で動かした時代を「情念」という切り口を用いて語る。彼らを突き動かしたのは、思想家フーリエのいう「情念」である。彼らはそれぞれ、熱狂情念、陰謀情念、移り気情念を有していた。この時代そのものが面白いのは勿論だが、鹿島茂の語りがさらに拍車を駆ける。鹿島氏は、タレイランやフーシェの回想録を翻訳する気はないのだろうか…。そして、ダグ・フーパーの『タレイラン評伝』はなぜに絶版。
2012/02/12
ミスタ!
とりあえず。長い。でも面白い。フランス革命に関する書物はたくさんあるけど、その中でもドラマを描いた書物の中で秀逸だと思う。フランス革命の際にこんな権謀術数が繰り広げられていたのだから、現代の政治でも単純な構図になるわけないんだろうなと思う。これは単純明快さを求める現代政治へのアンチテーゼのような書物だと読むこともできる。
2010/12/26
na_niga_shi
柑橘系の香りが好きだったナポレオンに対して、ジョゼフィーヌは麝香の香りが好きだったとよく言われる。そこから興味を持ってフランス革命期前後の登場人物たちを知りたくなった。4年にわたる連載をまとめた480ページの情念のこもった本。
2021/07/18
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