どうしようもないのに、好き イタリア、15の恋愛物語
どうしようもないのに、好き イタリア、15の恋愛物語 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
イタリアの男と女の恋愛模様を描く15の掌編小説集。物語の主な舞台はミラノなのだが、彼らの織り成す愛の感情とその発露は、なんとも陰影に富んでいる。大人の恋なのだ。しかも、恋の常として(結婚も含めて)それは誰にもままならないもの。物語には哀しみの感情が漂うが、それを身に纏い、あるいは心のうちに秘めながら、ミラノの男女はさらなる憂愁を帯びてゆく。色に例えるなら、それは限りなくモノトーンの世界だ。しかもそれはミラノの霧の中に包まれている。
2017/09/18
わっぱっぱ
舞台・タイトル・表紙から受ける“アモーレ”な印象を裏切られ、深まるトリステータ。描かれる二人はちっとも幸せそうじゃないのに、「したいな」なんて思ってしまうのだから恋って不思議。それともこれが上質な物語である証なのか。 確かに「好き」って、ままならないものだ。容易にはジャッジを下せないものだ。だから惹かれる。どうしようもないから、好き。なのだろう。
2018/02/18
AICHAN
図書館本。『ミラノの太陽、シチリアの月』(エッセイ集)で内田洋子を初めて知った。目の前に映像が溢れてくる映画のような作品を書く人だと思った。この短編集もエッセイだが短編小説のようで素晴らしかった。著者自身の体験をそのまま綴っているようだが、いずれのエッセイも物語性があり、本当に体験談だとしたらずいぶんとドラマチックな人生を送っているなと思った。しかし、思い直した。ささやかな体験談でも、この著者の優れた観察眼と豊かな感受性にかかれば見事な物語にならざるを得ないのだろう。
2017/07/02
はな*
ミラノが舞台の恋愛物語15話。内田さんが出会った様々な人たち(舞台女優、神父、女子高生等)の人生模様が1話15頁ほどの中にぎゅぅっと詰まってる。恋愛映画を15本観たような心地になった。エスプレッソや赤ワインと共に少しずつ読む作品かな。私はココアで一気に読んだけど(笑)「恋愛がイタリアの象徴のように思われるのは、イタリア人が他人に対して尽きない好奇心を示すから。私がイタリアに抱く気持ちと、よく似ている。」あとがきを読み、納得。思案顔でベンチに腰掛けてる女子高生に話しかける内田さんとぴたりと重なった。
2022/01/29
ジュースの素
人間にはたくさんの確執があり、この本ではそんな人々とのやりとりが描かれている。仕事はバリバリのキャリアがあっても家庭ではギクシャクしていたり、友人を招いても話がまるで噛み合わなかったり、そんな時の内田さんの心寒い記憶などが網羅されている。しかし、彼女の文はそんな思い出さえ、格調ある物語になる。文章力は大事だなぁ。
2018/03/31
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