語学の天才まで1億光年
語学の天才まで1億光年 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
高野秀行の19歳~29歳(1985~1996年)の外国語習得を軸とした、いわば青春記。この人がこれまでに学び、また実際に使った言語が25以上に及ぶらしい。大半は錆びついたそうだが(何しろこの人の言語習得の方法は、本人の弁によればブリコラージュ法であるから)、それでも現在でも話せる外国語として英語、フランス語、スペイン語、中国語、タイ語、ビルマ語、ソマリ語を挙げている。私から見れば、一番凄いのはワ語とリンガラ語である。それらの言語の習得は、もうほとんど『蘭学事始め』の世界である。
2024/01/07
trazom
今話題の一冊。流石に、抜群に面白い。探検好きで25以上の言語をモノにしてきた著者が、辞書も教科書もない辺境の言語を、聴き取り、ノートに書き写し、自分で法則性を見つけてゆく物語は感動的だ。公用語と共通語と日常語が一致している日本人には、「言語はアイデンティティ」という著者の発見に教えられることが大きい。文明や民族などのとても大切なことを、「言語」を切り口にして見事に炙り出した素晴らしいノンフィクションだと思う。体系的な言語学へのアプローチとともに、著者の人間愛溢れるお人柄とユーモアに満ちた語り口も絶品。
2022/11/24
読特
卒業に7年費やし、タイでの日本語教師の職につく。その後、国を転々、学習する言語も転々。目標定まらず、身分定まらず…はちゃめちゃ言語学習青春期。”辺境作家”としての”確固たる地位”を確立した今だからこそ楽しく読める。学んだ言語は25以上。使うために習い、目的果たせず新しい言語に手を出す。覚えては忘れ、”1億光年”の彼方を目指し続ける。語学はロマン。ロマンとは俗なもの。俗だからこそ役に立つ。世界は一つ。話せばわかる、言語を発するだけでも。機械翻訳ではできないこと。語学に才はいらない。共感する心さえあれば。
2022/12/26
ゆいまある
日本語話者であれば、意味不明なことを口走っている人とでも会話する私であるが、外国語の習得が進まない。高野さんは何故25カ国語も学んだのか?フランス語が通じるコンゴでリンガラ語を使ったところ、情報のやり取りだけでなく「仲良く」なることができた。言葉はコミュニケーションの道具なのである。高野本はほぼ網羅したので目新しい話題は少ないが、カルカッタでのまさかの人物との邂逅は今迄書かれなかった物語であり、こんな美味しいネタまだ隠してたのかと驚く。この本では触れられてないが、青年高野はきっと言語でモテたであろう。
2022/10/30
R
語学本の皮をかぶった、いつも通りの冒険記録だった。ある種半生記とも読める内容で、著者が過去に行った冒険や探検の際に駆使した言語について、ドキュメンタリでもないが、回想録的に紹介していくんだが、これが大変面白い。結局のところ、言語というのはコミュニケーション手段の一つであって、コミュニケーションは言語でなくとも、人対人でわかりあうという目的に達することであるという、その通りという内容なんだが、一切そうとは言わないのがよい。言語習得は、人間力が先に必要だと思うばかりである。
2023/01/21
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