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カミュ伝 (インターナショナル新書)

カミュ伝 (インターナショナル新書)

カミュ伝 (インターナショナル新書)

作家
中条省平
出版社
集英社インターナショナル
発売日
2021-08-06
ISBN
9784797680782
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カミュ伝 (インターナショナル新書) / 感想・レビュー

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パトラッシュ

思った通りに生きることは難しい。まして生き方が注目される著名な文学者となると、政治や世論と無関係ではいられない。貧困や戦争の中で自由とは何かを学び作家として成長したカミュにとって、同時代の主潮流であった左右を問わぬイデオロギーは支配を求める現実政治の不条理そのものであった。しかし厳しい東西対立と植民地解放こそ善とされた時代、故郷アルジェリアとフランスが引き裂かれることに苦しむ彼の心情は理解されなかった。ノーベル賞すら栄光ではなく批判にさらされたカミュにとって、事故による急死は長い苦悩からの解放だったのか。

2021/09/02

おたま

中条省平氏訳による新訳の『ペスト』とほぽ同時に出版されたこの『カミュ伝』。非常にタイムリーだと思う。不条理な人生を生きていくのに必要なのは「反抗」と「自由」と「情熱」だとカミュは言う。不条理と言う言葉とはうらはらにまことにロマンティックな在り方ではないか。カミュの人生はこれを地で行くものだった。少年期に結核になり、死という不条理に直面せざるをえなかった。母親は、耳が聞こえず、寡黙であり、文字を読むこともできなかった。カミュの文学はそうした不条理や沈黙につりあうだけの言葉を生み出す努力だったのだと思う。

2021/09/22

NY

過去、カミュの評伝には何冊か挑戦したがことごとく挫折。本書はカミュの人生(特に人間関係)と激動の時代背景、これらがどのようにカミュの考え方に影響し、作品に反映されていったかを分かりやすく示しており、最後まで読み通すことができた。 カミュは、生きることに貪欲(強い渇望)で、「正義」のために人を殺すことに一貫して反対した。彼の考え方は、目の前の不条理に抗するにはナイーブだったかもしれない。しかし、決して無力ではなく、理不尽な現実を直視してできる限りのことをするという、極めて強靭な精神に支えられているのだ。

2022/01/15

Melody_Nelson

「異邦人」は高校生の頃に読んだが衝撃的で、自分の人生で感銘を受けた本の1冊になった。「ペスト」も好きだったのだが、昔読んだエッセイだか批評や、「幸福な死」は読みにくさを感じて、以後避けてしまっていた。このように、熱心なカミュの読者とはいえない自分だが、本書でカミュ自身について知ることができ(幼少期は可哀そう)意義深く、改めて興味をもったので、まだ読んでいない作品、例えば「カリギュラ」「転落」などを読んでみたくなった。

2023/12/19

artgrape

カミュはあまり馴染みのない作家だったけれど、この評伝を読むと、小説や評論も読んでみたくなる。カミュの思想は、おそらく、次のような感じなのだろうと思う。初めから人間は世界に対して敗北することが決まっている。世界は世界の法則や独特の有り様で動いているのであり、人間はその一要素でしかないため、世界の不条理に抵抗しようとしても勝ち目がない。しかし、その抵抗にこそ美しさと意味があり、むしろ、生きることそのものである、と。

2024/07/17

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