失われたTOKIOを求めて (インターナショナル新書)
失われたTOKIOを求めて (インターナショナル新書) / 感想・レビュー
佐島楓
御茶ノ水、新宿、渋谷など、東京の各所を巡り、失われてしまった過去を求めて現在を歩くエッセイ。わたしの脳裏にちらつくのは昔の景色ばかりで、それがたまらなく懐かしい。著者とはまた色合いの違う懐かしさだと思うが、どこか共通するものもあるのかもしれない。もう二度と歩くことのない路地、入ることのない建物、ひとつひとつを慈しんだ。
2022/04/14
ナミのママ
コロナ禍直前の2019年12月から2021年11月まで東京を歩いたエッセイ。文化学院・新国立競技場・都庁・上野動物園・はとバス・トキワ荘・ジブリ美術館・渋谷・皇居。どの場所も目に浮かぶ。各所を巡りながら歴史を説いたり、自分の過去を重ねたりが楽しい。1964年の東京五輪や学生運動は知らないが著者の視点で綴られるものは報道とはまた違う色がある。開演当時の動物園は知らなかったし、宮崎駿さんと著者の3時間の対談は想像だけでワクワクする。文化学院のアーチは懐かしい。10年後、この街・場所はどうなっているのだろう。
2022/04/10
阿部義彦
集英社の季刊誌「kotoba」に連載されていたのの新書化だそうです。この題名からプルーストを連想した人は合格です。さて、コロナ禍の2年間に高橋源一郎さんが訪れた、東京の過去を多いに引きずっている、名所の数々です。文化学院の跡地から旅はスタートします、都庁、上野動物園、白眉は、トキワ荘漫画ミュージアムですね。場所を縦糸にそこにまつわる記憶や記録を横糸に歴史と心の旅が始まります。そして最後は皇居を巡ります。しかし、皇居をKOKIOとは、少し苦しくないですかねえ?失敬。加速度的に失われる景色達、温故知新。
2022/05/16
Inzaghico (Etsuko Oshita)
新宿の章では、2020年6月末に都知事選直前の都庁前で、候補者のポスターを眺め、選挙公報を読む。泡沫候補者の公約にまでじっくり目を通し、ツッコミを入れていくくだりに笑ってしまう。皇居の章では、植物学者としての昭和天皇の顔を紹介している。昭和天皇といえば「雑草という名前の植物はありません」というお言葉が有名だが、こんな文章も残していらっしゃるとは知らなかった。「自然の保護はますます困難になるであろうが、自然に親しむことが大切である」
2022/05/03
みみりん
著者が訪れた場所にまつわる自身の過去の記憶をたどっている箇所を読みながら私もその場所の自身の記憶をたどっていた。源一郎さんは私より少し年上だがその時代の記憶はほとんど同じ。忘れていた懐かしい記憶がよみがえってきた。すっかり忘れていると思っていても誰か他の人の思い出を手がかりに戻ってくることがあるのだ。新しい渋谷はまだ訪れてないので涼しくなったら行ってみたい。
2022/06/24
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